天候今一つも、咲き誇る高山植物に癒され、雪渓、ケルンの稜線楽しむ
唐松岳 2696m 2022年7月21日(木)~23日(土)
北アルプス北部の後立山連峰に位置する唐松岳は初心者でも登れる人気の山です。通常一泊二日のところを二泊三日とゆとりのある行程で登った。天候は不安定で白馬三山や立山・剱岳の雄姿は拝めなかったが、高山植物が咲き誇っていて花を愛でる登山となった。
1日目(7月21日)
バスタ新宿を定刻通りに出発した高速バスは子供たちの団体と我々6名プラス若干の一般客を乗せて白馬八方バスターミナルへ向かった。インフォーメーションセンターでジャンプ台の場所や営業有無を問い合わせたところ「店内に置いてあるパンフレットに電話番号があるから自分で確認すれば…」と中年オヤジのあり得ない対応にびっくり!
ジャンプ台は向かって左側に70m、右側に90mと並んでおり下から見上げると壮観な景色だ。リフトで登っていく途中に「岡部選手の最長不倒140m」の看板があった。K点マークを超えた地点だ。リフトの終点からさらにエレベータで上に上り、最後に階段で90mジャンプ台の滑降スタート地点まで登るのだが、この階段が網目で下が透けて見えるためかなり怖かった。最上部からは白馬の街並みが一望でき景色は素晴らしいが、ジャンプ地点まではもの凄い傾斜でここを滑り降りてジャンプをするなど人間業ではないなと感じた。ジャンプ選手の並々ならぬ訓練と精神力に脱帽しました。
ハイランドホテルでの夕食で特に人気だったのは自分で盛り付けるソフトクリームでした。温泉も広々していて源泉かけ流しもあり満喫できた。
<アクシデント1> 途中のサービスエリアで登山靴のソールが剥がれ始めているのに気づき、終点のバスターミナル2階にあるモンベル登山店で靴を新調するトラブルがあった。
2日目(7月22日)
ハイランドホテルの送迎バスでアルペンラインの八方駅まで送ってもらった。ゴンドラとリフト2本を乗り継ぎ終点の八方池山荘まで一気に910mの標高を稼ぐ。ここから唐松岳の山頂までは850m位だ。途中、黒菱平鎌池湿原ではニッコウキスゲの群落があった。
天気はなんとか持ちそうだ。山荘のすぐ上で木道コースと登山道コースの分岐があり、躊躇なく木道コースを選択。しばらく進むと木道脇にシモツケソウやニッコウキスゲ、クルマユリなどの高山植物が咲いており、写真撮影のためなかなかペースが上がらない(想定済)。
八方ケルンを過ぎれば間もなく八方池だ。眼下に池が見えた。だが、雪で覆われている?近づくと周囲が小さいので孫池のようだ。少し上り返すと大きな池が現れた。待望の八方池だ。残念ながら不帰ノ嶮から白馬三山(白馬鎗ヶ岳、杓子岳、白馬岳)の姿は見えない。
少し早いが池のほとりでお弁当にする。おにぎり2個とおかずが少々、多からず少なからずで完食できた。残すと翌日下山まで一緒に同行することになる。ここから本格的な山道となる。途中、大きな雪渓を巻いて登り、丸山ケルンの立つ開けた頂きに着く。風の通り道らしく、長居はできない。唐松岳頂上山荘まではもう少しのところで、岩場を巻いていた登山道が通行止めとなっており、直登ルートの岩場を登りきると山荘裏手の高台に出た。15時前にチェックイン、荷物を部屋に置いて空身で唐松岳山頂に登った。
<アクシデント2> 1名体調不良のため山頂を踏めなかった。急にふらつきだして、まっすぐ歩けなくなった。大量の汗がでて、横になってもしばらく眩暈が治まらなかった。
3日目(7月23日)
前夜からの雨と風が治まらない中、下山を開始。いきなりの岩場の下りでは風に飛ばされないように慎重に進む。四国在住のチェコスロバキアの女性と一緒に下山、丸山で別れた。雨はなかなか止まず八方池を過ぎたあたりでやっと明るくなったが、時折ガスが湧いてきて山並みは拝めない。順調に下り、予定より1時間早く八方の湯に到着できた。
湯舟は我々だけで貸し切り状態。ゆっくり汗を洗い流し、ビールで喉を潤しながら山行を振り返った。しばらくすると続々と登山客が下山してきて、賑やかになってきたので早めにバスターミナルに移動して、始発バスが来るまでまったり過ごした。
天候には恵まれなかったが、その分山小屋ではゆったりできた。我々が泊まった別館では4パーティぐらいしかおらず、寂しかったくらいだ。登山道も最後の岩場の直登を除けば全体的に緩やかで歩きやすかった。下山時、荷物を分散して持っていただいたメンバーの方々ありがとうございました。アクシデントはともに当山行のリーダでした。(SS)
<参加者のひと言>
★八方尾根にニッコウキスゲを始めとしてこれ程多くの高山植物を見られるとは驚きです。二日目の朝雨に降られましたが、この三日間色々なことがあり思い出に残る山行になりました。
(S)
★唐松岳の3日間は雨で残念でした。
(S.A)
★風に揺れる白いチングルマの大群落、紫の穂のクガイソウ、鮮やかな橙色のクルマユリ、はかなげなピンク色の、ミヤマ…、あれなんだっけ草などの色鮮やかな花々の大歓迎で私の後期高齢者の夏山は始まった。
小屋の前で暮れなずむ山々を眺めながらのオールドパーはうまかった。翌日の雨と風の中での下山の最初の岩尾根はチョットきつかった。
(手拍子足拍子)
★二泊三日でのゆったりプランで、初日は長野オリンピックスキージャンプ台見学のみ。滑走路と着地点の傾斜角の鋭さに驚かされる。
いよいよ二日目、ゴンドラ、リフトの乗り継ぎで尾瀬の湿原にも似たニッコウキスゲの群落に迎えられる。
木道コースをたどり、蛇紋岩が植生に影響を与え誕生したシニアに人気の高山植物園を散策。数えきれない可憐な花にめぐりあった。
丸山の前後はアルプスを象徴する原と痩せ尾根が続き、ガスを捲き込む雄大なシーンも散見された。
唐松岳頂上山荘前のピークでは、あまりの傾斜に先が読めず、難航するかと考えたが思いのほか短かったために手こずることなく無事攻略。山荘到着後の頂上攻略も成し、とりあえず最低限、目的は果たした。翌朝からの悪天候で日の出拝観などの予定は早々に断念。
(ヤマジジイ)
☆ 山小屋でのメモリー
山荘別館のお蚕棚二段に陣を張った我々のお向かいさんは女性のお一人さんで、チェコスロバキア出身(いまだに行政管轄と領地管轄が二国に絡むらしい)、居住地四国からの普通電車での遠征とのことでした。
四国の里山歩きが気に入ってのステップアップで、北アルプス入門編として唐松岳を選択。今回初めての山小屋泊まりが叶ったそうだ。
驚くべきは「山」に取り組む姿勢だが、なんと年間三割以上を里山を含めての山歩きに充てたいとの計画で、例えば神戸の息子さんを訪ねる際には、六甲山は必須。この日で89日目の山歩きとのこと、年間目標120日の約4分の3に近づいたと微笑んだ。
最終日の朝は横殴りの雨のなか彼女を含めて7名で出発。
東京の友人達を三年ぶりに訪ねる彼女は、特急あずさを予約済みで、時間を考えて丸山までの同行となり、お別れには彼女からの申し出で我々6名が彼女のカメラに収まった=ページトップの写真=。
丸山で別れの挨拶を交わしたはずが、先着のリフト乗り場のコーヒーショップで時間を潰し、老齢の我々の体調と道中を気遣い、その無事を確認したかったという言葉が沁みた。
「どちらから?」の一言から思わぬ山好き同士の交流に発展した。
(ヤマジジイ追伸)
★栂池高原スキー場の、ゴンドラ山麓駅付近からの生活道路、コマクサ通りと言われる全長200メートルほどの工事がゲレンデ際を伝ってスキー学校へと抜けていた。
夏は道路とわかるが、冬は雪に覆われてゲレンデの端っこになる。小路に立つと白馬三山が覆いかぶさるように迫ってくる。
その自馬に登ったときの尾根道ではじめてコマタサの花を見た。日当たりのいい斜面、水はけのよい小石混じりの土地が合っているようだ。その容姿はまさに女王と呼ばれるにふさわしい。
今回の唐松岳へのルートは、八方からゴンドラとリフトを乗り継いで1800mからの山道歩きとなる。
雲が広く覆い、霧が上にも、下にも流れていく。好天とは決して言い難いスタートとなった。小雨が来た、次の一瞬、空の一部がぬけて、青空となり、強い日差しがむきだしの腕を熱くする。ハイマツの無い谷からの風は、汗の背中を、過剰なまでに冷やしていった。雨具着衣調整に神経質に対応することとなつた。
日の神、風の神、水の神の、使いの者共が、唐松の天候を支配しようと小競り合っているのか、遊びあっているのか、それほどまでに脈絡のない空模様だ。
同行の一行は、遠望のきかないこともあり、足元に現われる花の撮影に夢中になっている。主な花の横にはA4サイズほどの看板が設置されており、植物名と花の写真を掲示している。この植物名とリアルな花を同一画面に納めてシャッターを押す。あれだ、これだと、一行は遠足での子供のごとく大はしゃぎ、大騒ぎしている。
シラカバにしては巨木、そして異様な形に幹と枝をもつ林をすぎて、山荘に着くころには雨はやみ。強風もなく曇は遠くに去り、夕刻とはいえど夏の強い日差しのみとなっていた。あれほど遊んでいた、神の使いの者共は、おそらく、遊びに飽きて帰ってしまったのであろう。静かに地は暮れに向かっていく。
宿に荷を置き唐松岳山頂に向かう。宿を出て、すぐに均質な砕石を斜面に整備した一区画がある。そこに、たくさんの株のコマタサが咲いていた。お―、まさしく、女王様がおられた。案内枚によると、ここで、植栽、保護しているようだ。むー、なんと、女王が因われてしまった。
山頂往復のあと、前庭で反省会ということで、持参のウイスキー飲み会あり、程なく5:30からの夕食となつた。ハンパーグ御膳を食して6:15には眠りについた。のではあったのだが…。
夜中、どうも外が大変なことになっている様子だ。ウトウトとしつつも外から聞こえて くる。風がうなり、叫ぶ。雨が山小屋の屋根をバリバリたたいている。さては、風神と水神が小屋近くで大あばれしているな。これ,では、朝が心配だ。日の神は来るのだろうか。この騒ぎに、雷神が乗り込んできたら、さらに、えらい大ごとになる。うつうつの中でも.翌朝の下山が厳しいものになると思われるのだ。突風で煽られるか、山道で滑らないか。不安感と緊張感は朝になっても解消できない。
反省会のあと、ひと時宿舎にもどったのだが、向かいの小間に単独行の女性がきた。あいさつをすると、すぐ返してくれた。長身で、面立ち爽やか、からし色の髪、メンバーの誰かが話しているのが聞こえる、遠い西の国からきて日本に長く住んでいて働いているとのこと。正確にコミュケーションでき、そして違和感もなく、知性も感じられる言葉を話す。翌朝、同行しての下山となるのだが、判断や行動も素晴らしいと思う。.思わずコマクサのイメージを重ね合わせてみた。
緊張感の中、一行7人、慎重に下山となる。徐々に回復、八方池では穏やかに、下界に来ると平常であった。(リフト関係者によると、昨夜は、下界でも人荒れだったという)
幸いなりかな。
(K)
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コース記録
1日目
バスタ新宿7:35発=(高速バス)=白馬八方BT12:48着、白馬ジャンプ競技場見学、白馬ハイランドホテル14:50着(泊)
2日目
ホテル9:10発=(送迎バス)=9:20八方駅9:30発=(ゴンドラ、リフト2本)=10:05八方池山荘10:15発=11:20八方池(昼食)12:00=13:30丸山13:40=14:50唐松岳頂上山荘=唐松岳=山荘(泊)
3日目
唐松岳頂上山荘7:00発=7:50丸山7:55=9:05八方池9:20=10:15八方池山荘10:25発=(ゴンドラ、リフト2本)=10:55八方駅11:00=11:15八方の湯(入浴・休憩)13:20=白馬八方BT14:15発=(高速バス)=バスタ新宿19:40着