蛇紋岩の山頂で一息、ウクレレつま弾く“天使の歌声”も流れて…
至仏山 2228m 2018年8月24日(金)〜25日(土)
今夏は何と台風の多い年かー。コースも定かならず、山行直前まで天気図とにらめっこの毎日だった。決行を決めたのは2日前。参加予定者には事前に実施決定のデッドラインを伝えてあったが、それぞれさぞ気をもんだことだろう。
20号が日本海沖に向かったその朝、新宿バスタに集合したのは9人。計画通り、高速バスで尾瀬戸倉入りした。決して晴天ではないが、雨は降っていない。午前11時50分、これなら大丈夫と尾瀬湿原の玄関口である鳩待峠から歩き始めた。夏のこの時期の尾瀬にしては登山者がめっきり少ない。やはり台風の影響だろう。おかげで、静かなしっとりとした尾瀬を堪能できそうだ。
緑の木道を進む。時折、舞うトンボが秋の気配を伝えてくれる。尾瀬はもう秋だ。1時間余りでこの日の宿がある山ノ鼻に到着した。泊まり客も少ないようで、部屋をゆったりと割り当てていただく。ザックを下ろし、まずは日のあるうちに牛首付近まで湿原を散策する。向こうに燧ヶ岳、そして振り向くと西には明日登る予定の至仏山がどっしりと構えている。山頂に少し雲がかかっているのが残念だが、広大な高層湿原の雰囲気は上々だ。木道を行き交うハイカーはほとんどなく、我々は軽口をたたき、湿原の花をのぞき込み、休憩ポイントでゆっくりと写真撮影を楽しんだ。
水面に5センチほどの白い花をつけたスイレン科の円形のひつじ草=写真右下=があちこちに見られる。Kさんが「名前の由来はひつじの刻、午後2時頃に開花するから」と蘊蓄を披露してくれる。ゆったりとした時間が流れる。こんなに静かで人気のない尾瀬は初めてだ。
宿に戻り、一番風呂につかると、牛肉の陶板焼きを中心とした夕飯が待っている。尾瀬の山小屋ならではの豪華なメニューだ。食堂の壁には「心の五線譜」と添え書きされた尾瀬ヶ原のポスターが貼ってある。食後、10畳の部屋で、早速ミーティング。いつものように、たわいもない話しで盛り上がった。
二日目は山組と湿原散策組と二手に分かれる。山組は、2228mの至仏山へと向かう。この山は21年ぶりだが、以前は山頂からこの山ノ鼻に下り、尾瀬ヶ原のたくさんの池塘、そして草紅葉が素晴らしかったことを思い出す。今は山ノ鼻から山頂への一方通行となっている。おそらく植物を保護するため登りのみとしたのだろう。そのためでもあるのか、昔より登山道がとても狭く感じられた。
足下はところどころ、まるで川だ。台風の余波で雨水がたまり木枠の階段にせきとめられ、その中を歩かざるをえない。やがて森林限界の標識が出てくるあたりから岩塊が大きくなり、滑りやすい蛇紋岩がこれでもか、これでもかとばかりに行方をふさぐ。慎重に上がることにするが、中には畳2,3畳分もあろうかという蛇紋岩の一枚岩があり、それを回り込んで3点確保で登っていく。高天原と呼ばれる辺りを過ぎて、急階段をいくつかしのいでいくと、次々とピークが出てきた後に、ようやく山頂に達することができた。この登りの感覚は木曽御嶽山のそれに、似ている気がする。
山頂は予想以上に登山者でにぎわっている。反対方向の鳩待峠からオヤマ沢田代経由で登ってきた人がほとんどのようだ。記念撮影を済ませたあとに、昼食にとりかかる。宿に作ってもらったおにぎり弁当だ。おにぎり二つと角煮の付け合わせで700円だ。食べ始めるとすぐに、きれいな歌声が聞こえてきた。ウクレレをつま弾きながら、澄んだきれいな声だ。「えっ」と思うほどの感激だ。つい先ほどまで、蛇紋岩との格闘で神経をすり減らしていた身には、まるで天空に広がる天使の歌声に聞こえた。
食べ始めたばかりのおにぎりを早々と仕舞い、カメラを持って歌の主にアプローチ。撮影のお願いをすると、微笑み返してうなずき、スピッツの「空も飛べるはず」を選曲のうえ、歌い始めてくれた。澄んだ歌声が2000mの山頂に広がっていく。尾瀬ロッジのポスターに描かれた「心の五線譜」というフレーズが思い出された。 「…君と出会った奇跡が この胸にあふれてる…」
(歌の様子は、写真館の中に『動画特集』としてアップしました。うまく視聴出来ていればいいのですが…)
そんなひとときを過ごした後に下山にかかる。今回、一番読みが当たらなかったのは下山ルートで至仏山から小至仏山への時間をガイドマップそのままに20分と計算していたことだ。急下降の連続で、実際は1時間近くかかってしまった。どうもガイドマップの標準時間はあてにはならない。結局、鳩待峠で湿原散策組と合流できたのは午後1時15分。尾瀬ヶ原の湿原散策組は何と10時半には鳩待峠に到着し、首を長くして待っていたようだ。
全員無事合流し、高速バスに乗車する前の時間を利用して、尾瀬ぷらり館にある日帰り湯で汗を流した。台風の名残を心配した山行だったが、ふたを開けてみれば、2日間にわたり、雨具を全く使うことなく帰京するバスに乗ることができたのは有難かった。帰りのバスに乗車後、すぐにゲリラ豪雨ならぬ大雨が降ってきたことを思えば、今回の尾瀬山行は、とても天気についていた。(G)
<参加者のひと言>
★久し振りに楽しい山歩きが出来ました。尾瀬を楽しんだ!
尾瀬に何回か行くチャンスがあったが何故か行かれなくなる、しかし今回初尾瀬に行くことが出来てワクワクしていました。久し振りの山しかもランクがCときた、私には至仏山は無理かなと思い湿原散策の予定でしたが、S氏の「せっかく来たのに歩くだけではつまらない」と言われ、それもそうか!と至仏山挑戦に変えて最高の尾瀬を楽しむことが出来ました。頂上に到着すると360度晴れ渡り気持ち良い風と景色を楽しめました。散策組との待ち合わせ時間も有り、「ゆっくりで良いよ」と言いながらザックを持ってくれて、サッサと登ってと無言のプレッシャーを背中に感じながら頑張って登って来ました。重たいザックを持ってくれた皆さんありがとうございました。
(失言が多い湿原最高女子)
★これっ!これだ。いっち・にぃー・のっ・さん!で振り返るたびに尾瀬ヶ原の全貌が望め、対峙する燧ケ岳がずんずん大きくなる。
あまりにも暑かった今夏の最後の一番!気合の一本勝負!。っていうほどでもないが、それなりに想い入れがあって念力で台風を吹き飛ばした結果実現した山行でした。蛇紋岩という地質がもたらす山容は、燧ケ岳とは対照的に森林限界がずいぶんと下のほうから現れて岩場が剥き出しになり、手足がフルに使えて私には好印象。途中までは登っている足元の山裾まで見えてカメラもフル稼働。お山の貫禄充分で行程が手頃。これだからよい子のみんなに好かれる山なんだろうな。
実は高1の夏、入部したての軟式庭球部の夏合宿の流れで、うっぷん晴らしを目的に一年生だけの山計画をボーイスカウト出身者がまとめ、装備のほとんどを準備。たぶん5泊7日の強行行程だったと思うが、テントを背負って燧ケ岳から尾瀬沼、二・三座をこなし、至仏山へ至り、平滑ノ滝、三条ノ滝に感動し、このひと夏を終えた。これが私の山初体験で、すれ違う人々との挨拶や何気ない会話であったり、テント場でのオトナ達の人生訓に教えられ、女子大山岳部のオネーさんに励まされたりが快適な夏を演出。
ただ、未経験者にはあまりの強行軍で、歩荷(ボッカ)にワンゲルとか山岳部のオニイさん達の荷姿の凄さに驚かされ、ここは素人が安易に立ち入ってはいけない場所かも?とも考えてしまった。
そう、その後、山にでもとの想いに至るまでに四半世紀を要した。あれ?そうか!二度目の尾瀬に至るにはなんと半世紀近くも経つんだ。
山頂から小至仏まで、それ以降の切れたったあんなに惚れぼれする岩峰が思い出せない。当時は他のルートがあり、そちらに行ったんだろうか?木組みの階段は当時からあったんだろうか?
なんとも記憶があいまいで断片的にしかつながらない。ただし、断定できる!蛇紋岩のあの場所での一級の”スベリ”だけは決して変わらないのだ!
こんなに素敵な「想いでの山」があったんだ!初恋の山としとこう。っと。
それにしても人生を半世紀単位で語る歳になるとは、あのころまったく思わなかったのになぁー・・・。
帰りのバスからの三つのお土産、虹と花火と夕富士が往きの台風、還りの雨を打ち消してくれて印象良き山旅として締めくくれました。みなさんありがとうございました。
(小室)
★せっかく尾瀬まで来たのに、暑さは相変わらず。ほんの一時さすが尾瀬まで来たかいがあったと思ったがつかの間、東京よりは涼しいのだろうがそれでも暑い。夜中はクーラーがない(当たり前)ので寝苦しく、やっと寝たと思ったのに暑さに耐えきれず目が覚めてしまった。部屋の中は蒸し風呂状態であった。明日からは猛暑の東京に戻ることになる。
(S)
★前に燧ヶ岳を見ながら、後ろに皆が登る至仏山を見て、尾瀬ヶ原を散策。沼に未の刻に花が咲くと言うヒツジグサの可憐な花が咲いている。逆さ火打も見られ最高!二日目至仏山の頂上に雲がかかり雲よ!どけと祈りがきいて去っていき、頂上の眺めは抜群のはず。鳩待峠迄出る木道で歩荷さんに何人も遭遇。70キロの荷物とか青年達に感激。帰りのバスの中、綺麗な虹と花火の話しをしていたら、花火が見られ台風も去りラッキーな尾瀬の旅でした。
(リンドウ)
★尾瀬ヶ原は今回で6回目になります。涼しく:気持ちが良く:楽しく歩くことができました。次回もよろしくお願します。
(浅地)
★湿原の奥まで続く木道と広い空、池塘に静かに咲いているヒツジグサ、やっぱり尾瀬はいい。ロッジの食堂のご飯をいっぱい食べてくださいとの娘さんの挨拶も爽やかでよかった。さて、散策組との別れの朝です。風の通らない蒸し暑い森林帯を漸く抜けるとクサリの付いた至仏山名物の蛇紋岩の大きな一枚岩です。涼やかな風が吹く階段の多い道を登るとやっと山頂です。あまり広くなく大賑わいです。眼下に湿原は見えますが、360度望める山々は遠く雲の中です。15分でおにぎり2個を食べ、鳩待峠へ下山です。黒い蛇紋岩はよく滑る。オットトト。日頃ワシがスポーツセンターで鍛えたのはこのためにあったのジャモン。」
(手拍子足拍子)
コース記録
【24日】
新宿バスタ6:35=(関越交通バス・尾瀬号)=10:40尾瀬戸倉10:50=(シャトルワゴン)=11:20鳩待峠11:50⇒⇒13:00山ノ鼻⇒⇒牛首分岐往復⇒⇒15:00尾瀬ロッジ(泊)
【25日】<山組> 尾瀬ロッジ7:00⇒⇒至仏登山口⇒⇒10:20至仏山10:50⇒⇒11:40小至仏山⇒⇒オヤマ沢⇒⇒13:15鳩待峠…合流<散策組>尾瀬ロッジ6:50⇒⇒牛首分岐往復⇒⇒10:20鳩待峠…合流
合流後 13:45尾瀬戸倉(ぶらり館で日帰り湯)…15:30=(関越交通バス)=20:10新宿 解散
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