樹海の湖畔に薄絹をまとって浮かぶ、たおやかな富士の嶺
パノラマ台 1328m 2024年6月6日(木)
今回は富士五湖の精進湖と本栖湖を分ける尾根の末端近くに位置する幾つかの富士山展望ポイント巡りのプランだ。
3月の下調べの情報から4月中旬から5月末は目的のパノラマ台下山口近くの「本栖湖リゾート」で開催の「富士芝桜祭り」のため、周遊バスの遅れが見込まれ、当初の山行実施予定日とした5/11(土)は1時間以上の遅延の可能性があるとのことで、一月ほど先送りしての実行となった。
高速バスがモーニングショーで過熱報道気味の河口湖駅に定刻に着いた。
確かに駅、ターミナルはインバウンド客で溢れているのだが、他方では手荷物受け渡し、乗降客誘導案内、チケット販売等の業務のほとんどが外国人スタッフによって、手際よくバスの数分単位での発着を成立させている。何か複雑な心境を懐いてしまった。
周遊バスのチケット購入、トイレを済ませ、町の喧騒から逃れるように周遊バスに乗り継ぎ、先を急ぐ。
1時間足らずで国道を分け、精進湖岸の道路を進み、バス停留所「子抱富士ビューポイント」下車。その名の通り精進湖北岸からま~るい大室山をおくるみに包まれた子に見立てて、慈しむように抱き抱える富士山が湖面越しに見える筈…。が、見えず。
まだまだこれから目的のパノラマ台、さらに烏帽子岳からもそれぞれの違った姿の「子抱富士」が見える筈と気を取り直した。
先ずは各人思い思いのショットをカメラに収め、湖畔の広場でストレッチ。
次ぎのバス停「パノラマ台下」に移動。私からは今日の天気予報について、午後から曇り模様のため、サクサクと行動して早めの下山を心掛けたい旨、お話しした。
いよいよ階段状のステップを踏み、新緑の中へと歩を進める。精進湖面が標高908mなのでパノラマ台までは高低差420m程度あり、いきなりの急斜面。雑木林の中、急勾配のステップ幅の狭い、つづら折りの山道をジグザグに辿る。
ガイドブックには『行程の手軽さからファミリー向けにお薦めするプラン』という一文がある。また、登山口のコースマップ看板の根子峠までのコースタイムは50分であり、我々のタイムは+30分差の1時間20分と、かけはなれていた。途中道を譲ったパーティーもさほど私たちと変わらない実際の所要時間なので、ある意味無責任で危険な看板だ。
息があがり、疲れが溜まり始めた頃に樹林がパッと開けた枝尾根上に出る。富士山の眺望が得られる地点だが、今日は山裾の輪郭のみ。が、貴重な広場なので大休憩を兼ねて集合写真も撮る。
一息ついてからもさらにダラダラと登り進めると、少し明るくなり、やがてやっとのこと探しあぐねた稜線状の鞍部、根子峠にたどり着くことができた。三方分山(サンポウブンザン)からの尾根道との交差点で、左へと歩を進める。
なだらかな緑に覆われた雑木の尾根道を辿り、下部温泉の道標を分け、さらに行くと前方から集団が現れ、次から次へと続々大パーティーが続き、挨拶を交わす。『こんにちは』『アニョハセヨ』のエール交換が20数名も続いた。
程なく緑の暖簾を分けて楽屋口から舞台に飛び出すように「パノラマ台」のステージ状の広場に出る。
突然開けた大海原のような風景の中心に富士山が聳える構図に思わず息を呑む…。と、行きたかったが、ここでも残雪を被った富士の頭が辛うじて見え隠れするのみ。
他の山々、湖を説明する展望盤もあり、西湖、精進湖、本栖湖を照らし合わせ俯瞰する。1,100年あまりの昔、一つの大きな湖が青木ケ原の溶岩流によって分断され、三つの湖が誕生したというこの地の成り立ちに想いを巡らす。
さてお待ちかねの昼食と食後のコーヒー。そしてエレガントなシフォンスカートをまとったように山裾を翻す、富士の足元を味わい尽くして次ぎのポイントへと向かう。
急な下りがしばらく続き、緩やかに登り返すと烏帽子岳。ここもパノラマ台に劣らず、あの大室山がさらに近く、残雪もよりつぶさに見えた筈だが、残念。ここでも富士はその姿を隠しており、肌寒さも募って来たのでそそくさと退却。
電波塔から30分程の急下降で国道300号からの騒音が聞こえたら、まもなくトンネル上部だ。
左に山裾に沿って歩き、しばらくは樹海の中に身を浸し、深緑の森の散策を楽しむ。国道を横断してさらに本栖湖湖畔の水辺に向かい、下山中のおしゃべりの盛り上がり、興奮を冷ますべくクールダウン。ここはまさしく青木ケ原樹海のモデルコースと言えそうな静寂な世界観に浸ることが出来るコースで苔むした溶岩台地と原生林に覆われ、良く整備されたフカフカの遊歩道が急登と急下降での疲れた足になんとも優しい。
さて、山行の最後は下見に同行いただいたグルメのWさんが目ざとく見つけ、あたりをつけておいた、山梨の味覚を楽しめるお店に急いだ。
『午後から雲行きがちの情報に煽られてしまったが、なんとか良い感じで下山できました、ありがとう』ということで山行を締めた。
肝心の富士山は道中の設定ポイントではことごとく姿を見せず、残念な思いもしたが、行きと帰りの高速バス車窓からは水墨画に相応しい落ちついた富士山を眺めることができた。
また違った姿を見てみたい。
(K2)
<参加者のひと言>
★本当に久しぶりに山登りに参加させて頂きました。集合場所新宿バスターミナル4階に行くのは初めてで、小室さんに教えて頂きやっとこ4階に到着し、合流出来ました。高速バスに乗り河口湖駅近くになると、何と富士の山が顔出して「おっ早う」の挨拶をして下さいました。視界いっぱいに広がる樹海は緑いっぱい。少人数の山行でしたが、ゆっくり皆んなでお喋りしながら最後まで楽しく過ごす事が出来ました。小室リーダー、参加の皆さん本当にありがとうございました。最後の反省会最高。又宜しくです。
★登山道はよく整備されており、足元も柔らかで歩き易かった。樹林帯の中、そよ風も適度で汗もほとんどかかずに済んだ。高速バスの中から富士山を望めたが、いくつかあるビューポイントでは全く見えず、ちょっと残念であった。追記:アルバムの最後の写真はリーダが下見の際に撮ったものです。
(白毛門)
★富士山は雲に隠れてなかなか全容は見られませんでしたが、爽やかな空気の中、自然林の新緑の美しさに見とれてしまいました。
(S)
★当日は雲が多く富士山はしっかりとは見られなかったものの、風は爽やかで涼しく、山行には最適な気候。登山口から峠までの急登も休み休みでしたが快適に登ることが出来ました。途中のフタリシズカや峠近くのヤマツツジも目を楽しませてくれました。下山後、バス待ちでのビールとワカサギ最高でした。
(綿引)
★山歩きにはとても良い気候でした。時折注ぐ太陽の強い日差しも、新緑を渡る風が汗ばむ身体を涼しく包み込んでくれます。頂上に向けて歩みを進め、目の前には、あの富士山がドーンと現れるはずでしたが、残念ながらこの日はおあずけ、山頂付近は雲に覆われて見えませんでした。でも、本当に雨が降られることなくて良かった。リーダーのおかげですね。リーダー、皆さんにご配慮いただき無事に下山出来ました。ありがとうございました。とても楽しかったです。
(mk)
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高速バス:新宿7:15→河口湖駅9:00 周遊バス:9:40→子抱富士ビューポイント10:35
パノラマ台下10:50→中間ビューポイント11:25→根子峠12:15→下部温泉分岐12:30→パノラマ台12:40(昼食)13:15→烏帽子岳13:45→R300トンネル上部14:35→本栖観光案内所15:30
周遊バス:本栖観光案内所16:45→河口湖駅17:45 高速バス:河口湖駅18:50→新宿20:20