富士に転じての稜線歩き。霧の樹間抜け、広い三湖台へ。

足和田山 1355m 2012年7月7日


 梅雨時の山行は悩ましい。週末に晴れてくれるかどうか。上州草津の清々しい樹林歩き花と展望の山、草津白根山の山行を楽しみにしていたが、いっこうに雨域は去らない。それどころか、直前の予報では大雨注意報発令とあっては、やむなく中止するしかないか―。あれこれ算段してみる。せめて曇天の中の山歩きはできないか。選択肢を整理して、天気図とにらめっこする。そして決めたのが富士三脚のひとつ、足和田山への転進だ(ちなみに、ほかの富士三脚は箱根の足柄山、駿河の愛鷹山)。浪漫会初めて山行当日朝の目的地変更の山歩きとなったが、歩き終えてみれば、雨具を全く必要としない、穏やかな稜線上の山歩きを楽しむことができた。幅広い樹林帯の中のまっすぐな山道は、始終笑い声に包まれていた。

 この日の参加者は17人。いつものバスよりもひと回り大きい28人乗りバスのため、ゆったりの乗車だ。早朝の都心を新宿まで下を走り、中央道に乗る。途中、事故渋滞もあったが、河口湖インターから富士パノラマライン経由で、9時半過ぎには、ほぼ予定通り、一本木バス停近くの登山口に到着できた。雨は全くない。周辺には清々しい山の息吹が満ち満ちている。イノシシよけの入口を開閉して歩き始める。

 実に気持ちのいい景色だ。木立がみずみずしい。緑が濃い。霧がかかり幻想的でもある。時折、丸太階段の坂道が出てくるが、それほどの急傾斜ではない。雑木林のなだらか道が九十九折りに延びている。足元の枯れ葉の中を注意深く見ると、珍しい銀竜草(ギンリョウソウ)が顔をのぞかせている。葉緑素がない、透き通るような白ユウレイソウい植物で、別名ユウレイソウ=写真左=とも言う。そして、緩やかな道になったところで、ふと路傍を見ると、古い鉄剣を納めた小さな堂がある。さらに大嵐の道と合流してしばらく行くと、早くも足和田山の山頂だ。五湖台というから、ここから富士五湖(本栖湖、精進湖、河口湖、西湖、山中湖)が見えた時もあったのだろうか。この日は霧がかかり視界がきかないこともあって、いつもは見える河口湖や幻の魚、クニマスの発見で有名となった西湖も見えない。展望台に上がったり、ベンチでゆっくり休憩した後、三湖台を目指すことにする。東海自然歩道に指定された道は、ほとんどアップダウンがなく、道幅が実に広い。談笑しながらの散策にはもってこいだ。涼しい風が通り抜け、薄く霧がかかる中、マイナスイオンを身体全体でたっぷり受け止めて、ゆるやかな尾根歩きを存分に楽しむ。

 登山口から2時間半。広々とした三湖台に到着した。青い空、四囲の山々に沸き立つ雲。360度の眺望を楽しみながらお弁当を広げる。昼食後は、ティーパーティーに移る。コッフェルをガスコンロに仕掛け、熱々のコーヒー、緑茶を心ゆくまで味わう。クッキーの差し入れ、美味しいサクランボなどのおやつ類をお供に、ひとしきりお茶の時間を楽しむ。大自然の中の時間がゆっくりと流れる。山の良さを実感できる贅沢なひと時だ。

 ほぼ1時間を三湖台で過ごした後、下山にかかる。途中、紅葉台のレストハウスに立ち寄りトイレを拝借したり、木立の中に見え隠れする富士山の眺望を楽しみながらのゆったりペースの山行で、鳴沢風穴を目指す。鳴沢風穴の駐車場に至る途中、あの青木ヶ原の樹海を抜けることにする。あまり気持ちのいい道ではないが、ものは試し。道端に出てくる「自殺防止」を呼び掛ける看板を横目に、溶岩状の露岩がのぞく道を歩く。実際は20分ほどの樹海歩きだが、多くの方は早く抜け出たい一心で、もっと長く感じたかもしれない。

 立ち寄り湯は、「富士眺望の湯 ゆらり」だ。割引券を使っても千円とはちょいと高いが、露天風呂の五右衛門風呂からは富士山がばっちり見える。様々に趣向を凝らした作りであり、富士の麓の温泉でいい汗を流すことができた。帰りのバス車中は、いつもながらの楽しい談笑となる。皆さんの感想からは、この日は「てっきり山行中止」と踏んでいた方が多いことがうかがえたが、終わってみれば、雨具なしの穏やかな山歩きとなった。急きょの目的地変更ではあったが、大過なく終え、楽しい一日を過ごすことができた。(G

コース記録

曳舟6:00=錦糸町=木場=6:25清澄白河。箱崎から首都高、中央高速に入り、河口湖IC=9:25一本木バス停近くの登山口

登山口9:40⇒11:05足和田山(五湖台)⇒12:20三湖台(昼食)13:25⇒14:50鳴沢風穴(全員、バスに乗車)=富士眺望の湯ゆらり=19:00帰京  

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