雄大な富士を背に、新緑の稜線をたどる


愛鷹山(越前岳)1504m 2010年5月9日(日)


「富士見台」「富士見眺め台」「富士見峠」と、稜線沿いに雄大な富士をバックにぐんぐん登る「富士」と冠した地名がいかに多いことでもわかる通り、愛鷹山は富士山の絶佳の展望台として知られる。

 我々が訪れた連休明けの1日は、まさに快晴。バスは首都高、東名をスイスイと走り抜け、十里木の登山口に午前8時半には到着した。「一行13人」と書きたいところだが、正確には「十里木の登山口までは13人プラスα」、この後「12人で登山」、そして「下山口ではまた13人プラスα」と、引き算足し算しながらの山行とあいなった。なぞ解きはのちほど、ということでまずは筆を進める。

 登り始めから、いきなりの木の階段の急登が続く。カヤトの急斜面をグングン上がる。振り向けば、大きな富士山が翼を広げるように鎮座ましまして、急坂もさほど苦にならない。まもなくヤグラを組んだ展望台に着き、ここで休憩を一本=写真=。さらに、登り一辺倒でひたすら高度を稼ぐ。馬の背と呼ばれるあたりに来るとようやく平坦になる。山桜やミツバツツジなどが見られる山路が樹林の間を幾筋にも分かれ、山頂へと延びている。目指すは愛鷹連峰の越前岳。

 富士山の姿が樹林の中で見えにくくなったころ、道もゆるやかになり、やがて山頂だ。2等三角点のある山頂には、すでに多くのハイカーが先着していてお昼を食べている。見晴らしは抜群だ。富士山はもちろん、遠く南アルプスや駿河湾も見える。記念撮影を済ませて、三々五々ランチタイムとする。

 富士山の眺めを楽しむのはやはり午前中か。次第に雲が濃くなり、いざ下山にかかるころは、富士山頂は隠れてしまったが、だいぶ堪能したことで未練はない。下山は、東の尾根筋をたどる。アセビの樹林帯を抜けて下る。登山道はかなり深くえぐれて歩きにくいため、脇のカヤト道を歩く。登山道を離れすぎないよう、狭い木々の間をすり抜けるように歩く。そうこうするうちに、富士山のビューポイントである富士見台に出る。何と脚立まで置いてある。富士見台とは言え、自然の中に鉄製の脚立はちょっとミスマッチでさえある。

 鋸岳展望台を通り過ぎ、さらに黒岳への分岐点でもある富士見峠にさしかかる。ここまで来ると下山口まで、あと1時間足らずだ。途中、無人の愛鷹山荘あたりの新緑は素晴らしく、陽光を浴びてキラキラと光っている。新緑の木々の葉を透かすように紺碧の空からさんさんと日光が降り注ぎ、五月の山を実感する。山神社まで降りると後は車道歩きで、愛鷹山の登山口まで20分ほどで到着し、山行を締めくくった。

 下山口で再び足し算だ。ここで「12人+1人+α」となり、朝の「13人+α」に戻った。さて、ここらでなぞ解き。というよりは、なぞ解きに代えて、我々が登り始めてすぐの午前9時前、東に2キロほど離れた富士サファリパークで展開された光景を紹介しよう。

 連休明けとはいえ、日曜日の富士サファリパークは朝早くから親子連れが詰めかけ、午前9時の開園を待ち兼ねるように車が列をなしていた。どうやらお目当ては、ライオンなどの猛獣を間近に見ることができるジャングルバスだ。開園と同時にチケットが売り切れてしまう人気ぶりのため、早く入場してチケットを買い求めたい客が殺到する。

 そうした中で一風変わった客がいた。何が変わっているかというと、ほとんどの客が乗用車なのに、この客は何と20人ほどの大きなマイクロバスに子供と二人だけ。園内にある無料駐車場に、そのマイクロバスを駐車させて欲しいと数人の係員と押し問答を繰り返していた。困ったのは係員らだ。

 「このマイクロバスはあなたのですか?」「そうです」「二人だけで、これに乗って来たのですか?」「はい、だから中に駐車させて下さい」。係員はとうとう根負けして、園内の無料駐車場に誘導したが、そのマイクロバスには「山遊浪漫会」と、どこかで聞いた名札がかかっていた。

 この親子連れ(?)、仮に名前をT.Hさんとしておこう。子供の方はK君。このTさんとK君はそれから半日、待望のジャングルバスや動物と興じたりして過ごし、さらに午後2時過ぎには、愛鷹山を登頂した12人と合流して「大野路」の湯船に、悠然としてつかっていた。K君はまもなく家族連れで中国・大連へと引っ越しをする。この日は引っ越し準備に忙しい両親のたってのお願いで、Tさんは登山をあきらめ、K君のお守となったが、途中からミイラ取りがミイラになったのは言うまでもない。(G)


コース記録

清澄白河6:30==箱崎JCT=(首都高⇒東名高速)=裾野IC=(県道、国道469号)=8:30十里木バス停から400m先の越前岳登山口駐車場

越前岳登山口駐車場8:48⇒⇒9:28馬の背⇒⇒10:35越前岳(昼食)11:25⇒⇒11:45富士見台⇒⇒12:55山神社への分岐⇒⇒13:40愛鷹山荘⇒⇒13:40愛鷹登山口==14:10富士遊湯の郷「大野路」15:55=18:50帰京


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