上り1,250m、下り1,500mの花の山旅…真夏の雪渓、神秘的な御来光


白山2702m 2013年7月19日(金)〜21日(日)

これ以上ないと思える晴天に恵まれた二日間。日本三大信仰の山、北陸の白山に11人で登った。四方八方登山ルートが走る大きな山である。登山道には疲れを癒してくれる高山植物があちこちに咲き、さすが花の名山の代表格でもある。

花の山旅は雑踏の渋谷の繁華街からスタートした。参加者は予定の集合時刻を待たずに次々と集まり、高速夜行バスに乗り込んだ。金沢駅まで7時間余、そして登山バスへと乗り継ぎ、登山口の別当出合には午前9時過ぎに到着した。天気は真夏の晴天だ。夜行バスの疲れをさして感じさせないほど、みんな元気いっぱい。準備体操をした後、さあ2日間の白山行へ出発だ。

歩きだすとすぐに長い吊り橋が出てくる。別当谷にかかる、長さ120mに雪渓を渡るも及ぶこの吊り橋を渡って砂防新道コースに入る。しばらくは谷沿いに山肌を巻く樹林道を行く。途中、砂礫の滑りやすい斜面があり注意を要する。樹林の間からは土石流対策の砂防ダムが見え隠れする。それほど難しい山道ではないが、岩や石に足を取られないように注意して登る。小1時間で最初のチェックポイント、中飯場に着く。この先、道は徐々に険しさを増してくる。登山者が多いため登山道はよく整備されている。道幅も比較的広い方だが、初日に1,200m登らなくては小屋までたどり着けない。

道々、水分の補給を怠らないようにし、確実に高度を稼いでいく。別当覗のビューポイントを過ぎ、登り始めから3時間近く、標高にして700m上がったところにある甚之介避難小屋に達する。きつい日差しの中、上り一辺倒の急登を何とか登り詰める。息が上がりはじめ、足が思うように前に出ない人も出てくる。朝食からすでに5時間以上経過しているため、シャリバテを避けるためにも、ここでひとまず昼食とする。避難小屋にはいくつかのベンチがあり、昼食休憩を過ごす人でにぎわっている。小屋からはまだ山頂は見えないが、真っ青な空のもと、幾重にも稜線が走り、大きな山容が次第に明らかになってくる。

ここからが砂防新道で一番の急登だ。それにしても水がとても冷たく豊富だ。一年中雪が解けないといわれる白い山ゆえ、雪解け水が至るところから湧き出しているようだ。延命水といわれる名前の付いたわき水を両手にすくって飲み干す。あまり飲み過ぎていたずらに命永らえても困りものかななどと考えつつ、喉の奥まで沁み渡る甘露のような水に一息つく。

左は谷が切れ落ちた崖の狭い道を行く。前方から間断なく登山者が来て、注意深く山側に重心を移し交差する。ザレた山道で何度かすれ違いを繰り返す。そして、やがてこの日の最大の難所、十二曲(じゅうにまがり)へとさしかかる。九十九(つづら)折りの急登だ。

傾斜がきついカーブを慎重に足を運ぶ。ふと足元を見ると、真っ青なイワギキョウや可愛いツガザクラやキンポウゲ、ミヤマダイモンジソウ、ハクサンフウロなど数多くの高山植物が咲き乱れている。うまくしたものである。息を切らして上がると、そこには癒しの花たちがほほ笑んでいるという仕掛けだ。ハクサンの名前をついた花は21種類あるとのことで、さすが花の白山の面目躍如だ。花と延命水に助けられながら登りつめたところで、ようやく黒ボコ岩に出る。

黒ボコ岩は大きな黒い岩塊だが、火砕流によって山頂から運ばれてきた火山弾という。その黒ボコ岩を過ぎると、これまでの風景は一変し、平坦な弥陀ヶ原が眼前に展開する。一本の木道がどこまでも伸び、その両側に広々とした高原が続く。木道の両側には、チングルマ、シナノキンバイ、ハクサンコザクラ、コバイケイソウなどが咲いている。清々しい白山ならではの別世界だ。

そして、弥陀ヶ原を40分ほどで抜け、最後の岩場を越えると、今夜の宿泊地、室堂が姿を現す。時間があれば、さらに山頂をと思うが、御来光を待ち構える人たちすでに午後3時近く。山頂は翌日のお楽しみとして、ビジターセンター前の広場で懇親会に切り替え、全員生ビールで疲れた身体を潤すことにする。周辺のベンチは登山者でにぎわい、思い思いに至福の時を過ごしている。白山の山頂には霊峰白山を御神体とする全国白山神社の総本宮の奥宮があるが、広場の山頂側にはその奥宮の鳥居がある。夕食の時間までの2時間、笑いの種は尽きず、いつもながらの楽しい時が流れた。

翌日は午前3時に起床、4時前にはヘッドランプをつけて山頂へと向かう。すでに多くの人がいて、ヘッドランプの明かりが、漆黒の山頂へとうねるように点々とつながっている。上り始めてしばらくして山頂から太鼓の音が聞こえてきた。御来光が見える日には、山頂の神主が太鼓を打ち鳴らすのだそうだ。先を急ぐ。案の定、山頂は東側の岩場にへばりつくように人があふれ、こぼれ落ちるのではないかと思うほどだ。日の出は午前452分。四方の山並みがうっすらと見え始め、堂々とした白山がその中央に位置しているかのようだ。残念ながら雲海が広がっているため、真ん丸の太陽の日の出というわけにはいかなかったが、雲海の切れ間が徐々に明るみを見せ、光を放ち、やがて光の束が四方に伸びていく様は神秘的である。この間、神主が白山の来歴や四方の山の説明をしてくれる。

ご来光を迎えた後、早い時間の小屋立ちに備えて、再び小屋へと下ったが、Sさん、Kさん、Iさん、K嬢の4人はさらに山頂から御池巡りを楽しんだ。4人を除いた本隊7人は朝食を済ませ、645分には下山を開始した。広々とした早朝の弥陀ヶ原を下るのはとても気持ちがいい。朝の美味しい空気を胸いっぱいに吸い込み、ゆったりとした木道歩きを存分に楽しむ。ほどなくして御池巡りのメンバーも合流し、往路とは異なるエコーラインをそろって下山する。砂防新道よりも急登は少なく、花も多い。途中の雪渓渡渉も魅力だ。南竜山荘、そしてテント場が見え、どんどん高度を下げる。下り始めて1時間半近く、砂防新道と合流する南竜分岐に達した。ここまで来て登山者が急に増える。下山する人、これから山頂目指し上ってくる人と、南竜分岐はさながら交差点だ。日曜日ということもあるのかもしれない。次から次へと上ってくる。老若男女、小さな子供から、外国人の姿も多い。

照り返す日差しの中、甚之助避難小屋を経て、中飯場と逆に戻り、11時前、ようやく登山口の別当出合に着いた。これで二日目は早朝、山頂まで250mを上り下りし、さらに小屋から1,250m下ったわけだ。かなりの標高差ではあるが、道は整備されていて、登山道わきに咲き誇る多くの高山植物が終始、癒してくれた。

別当出合から登山バスに乗車し、予定通り途中の白峰温泉で汗を流した。綺麗な素晴らしい温泉で、風呂から上がって、地域のほのぼのとした夏祭りも楽しむオマケもついた。復路はJRの特急、新幹線を利用しての帰京となったが、金沢駅では地元の海の幸をふんだんに使ったお寿司と美酒をこれまた堪能して、二日間の山旅を締めくくった。(O)

閑話休題、余談です。今回、というより「今回も」と言った方が正確ですが、Kさんが活躍しました。上りや下りで、足を痛めたメンバーを皆で支えあう中で、Kさんは一足先に小屋に行き、宿泊スペースをおさえ、そしてまた取って返すという健脚ぶりをみせたのです。実はKさん自身も、この種の役回りを大いに期待して楽しみにしているようで、「いつでもいいですから、ゴーサインをお願いします」とリーダーに“直訴”するという具合だ。「核」のボタンは決して押してはいけませんが、「核」ならぬ「鎌」のボタンを何時押すかー。当会にとって、いざという時に頼りになる「Kボタン」がまた一つ増えました。 


コース記録

719日(金)
渋谷マークシティ22:45=(夜行高速バス)=

720日(土)
6:00金沢駅6:45=(登山バス)=9:10別当出合9:30⇒(砂防新道)⇒10:15中飯場⇒12:10甚之助避難小屋12:4513:10南竜分岐⇒14:15黒ボコ岩⇒14:55室堂小屋(泊)

721日(日)
3:00起床⇒4:50山頂・ご来光⇒6:00朝食・室堂小屋6:45⇒(エコーライン)⇒8:00南竜分岐8:108:30甚之助避難小屋8:409:10別当覗⇒9:50中飯場10:1010:45別当出合11:30=(バス)=12:13白峰(白峰温泉総湯)14:13=(バス)=15:50金沢駅17:17=JR特急はくたか23号=19:59越後湯沢20:09=(上越新幹線Maxとき348号)=21:14上野駅 (解散)

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