紺碧の空に真白き霊峰富士が威風堂々と
金時山 1213m 2009年5月9日(土)快晴
大きな、大きな富士の峰が眼前に―。その長い裾野は見晴るかす地平線に雄大な翼を広げていた。
すっきりと大気が澄み渡った皐月晴れの一日。乙女峠茶屋前の登山口に降り立った時刻は何と午前8時15分。渋滞の連休を避けて、首都高、東名を疾駆したバスは、スムース過ぎるほど順調な流れに乗り、目的地に到着した。この日の参加者は入会希望の4人を交えて14人。登山口で準備体操をした後、昔ながらの乙女峠のコースをたどって、金太郎伝説で知られる金時山を目指す。
登り始めは樹林の中。昨日までの雨のせいか、足元は多少ぬかるんでいたが、新緑の清々しさはこの時期ならではのものだ。適度にごろごろしたジグザクの石ころ混じりの道を上がっていく。あっちの藪から、こっちの藪からウグイスが美しいさえずりを聞かせてくれる。40分ほど歩いた頃、木々に覆われた視界が急に開けたと思ったら、富士山の見晴らし台として知られる乙女峠に着いた。暫時休憩。皆で、お立ち台ならぬ展望台に登ろうとしたら、ここでハプニング。大きなカメラ機材を持ち運びしていた数人の若者が近づいてきて、いきなり「撮影取材」の申込みだ。「えッ」というと、このカメラクルーはテレビ東京の取材陣。かの人気テレビ番組「アド街ック天国」の取材チームで、地元の方をインタビューした後、今度は登山者の撮影シーンを狙っていたようで、そこに出くわしたのが浪漫会の「善男善女」14人だ。
この突然の“出演依頼”に臆することなく、すぐ反応したのは、さすがミーハーぞろいの我がメンバー。もとよりメンバーの皆さんの辞書には「断る」という字句はサラサラなく、求められるままに、乙女峠で美しい富士山を見てきゃッきゃッ、喜び騒ぐさま(これをヤラセというのかどうか…)をみごとに演じきった。カメラ目線もなかなかのもの。「ごく自然に振舞って」という注文にテキパキと応じ、ギャラを要求するでもなく、皆さん、素直ないい方ばかり。
番組は6月20日(土)午後9時から放映予定とか。取材クルーからは「撮影した分がすべて映るのでなく、編集作業が入りますので…」とのお断りもさりげなく。果たして、テープがどう切り刻まれるか不明だが、おそらく放送当日は皆さん、しっかりテレビの前に陣取るか、録画予約しておくかー。いずれにしても楽しみがまたひとつ。何はともあれ、乞うご期待だ。
乙女峠から長尾山まではやや急登が続く。ゆっくりと高度を稼ぎ、長尾山を過ぎると、今度は頂上までのアップダウンが待っている。江戸時代の頃までは「金時山」は「猪鼻岳」と言われていた急峻な山だが、その「猪鼻」の名前から想像される険しい山容だ。息を整え、急登をつめて上がる。樹林が途切れた右手を見ると、箱根最高峰の神山、大涌谷、そして市街地をはさんで芦ノ湖などが見え、その素晴らしい眺望が疲れを癒してくれる。
そうこうするうちに、ほどなくして眼前に「天下の秀峰 金時山」と大書された三角錐の大看板がドーンと現れた。頂上到着だ。好天に恵まれて、頂上の茶屋の前のベンチは大勢の登山者でいっぱいだ。まずは富士山をバックに全員の集合写真を撮影=写真=。金太郎ゆかりの模造のマサカリも置かれ、まさに金太郎さまさまだ。目の前のくっきりと雄大な富士山を眺めつつ食べたお昼の味は最高だ。これだけ素晴らしい富士山を目にできるのは、まさにラッキーとしか言いようがない。ここでまたハプニング。北海道出身のメンバーの方が、狭い頂上で同郷の方とばったり遭遇。お互い「もしかしたら」と探るように見ていて「やっぱり」となったよう。それにしても広い世の中の奇遇も色々あるが、金時山の頂上の出会いは、また格別だったようだ。
いつまでも富士山を見ていたい気持ちを振り払い、小1時間後、下山にかかる。頂上から矢倉沢の分岐までは急峻な坂道だ。食後でもあり、慎重に慎重に降りる。登ってくる人は汗びっしょり。登りにこのコースを取ると大変だろう。ゆっくりと分岐まで下り、さらに公時神社に至る右の道をひたすら降りる。途中、金太郎宿り石という、ぱっくりふたつに割れ、注連縄が渡された大きな岩石の脇を通り抜けていく。車道をまたいでしばらく行くと、もう公時神社の社殿だ。登り始めてから、ゆっくり4時間半。全員、無事に下山だ。
待機していたバスに乗車し、近くの「マウントビュー箱根」の源泉湯で汗を流した。この後、時間も早かったこともあり、運転士のご好意で大涌谷まで観光。観光客でにぎわう大涌谷の土産物屋で、1つ食べると7年、命が長らえるという「黒たまご」をひとつずつ食べ、帰途についた。帰りのバスでは、皆さんから差し入れのワインを次々と開け、いつものように感想の挨拶あり、ためになる薀蓄話や近況報告ありと和気藹々とした車中だった。(G)
コース記録
清澄白河6:25==8:15乙女峠茶屋8:30⇒⇒9:15乙女峠9:35⇒⇒9:55長尾山10:00⇒⇒10:50金時山11:40⇒⇒(矢倉沢分岐)⇒⇒13:05公時神社(バスに乗車)==「マウントビュー箱根」14:45==15:15大涌谷==18:00清澄白河