山肌をピンクに彩るツツジの群落と新緑の景観
久住山 1787m 2009年5月30日(土)〜6月1日(月)
九州最高峰の九重連峰の主峰である久住山は、国の特別天然記念物・ミヤマキリシマツツジの宝庫としても知られる。山肌をおおうピンクのツツジ=写真=は、新緑と相まって素晴らしい景観を展開する。そのピークに、九重連峰を周回するコースを歩いた。
朝早く、羽田から大分に飛んだ。大分空港でレンタカーを借りて、まず登山口の長者原に向かった。昼過ぎ、レンタカーを降りて、長者原から雨が池に至る自然探勝路を歩く。やや曇り空ながら、暑くなく、歩くのにちょうどいい。樹林帯の中を縫うように整備された木道の周囲には、一つ一つの名前が標識で丁寧にしるされた木々が繁茂し、実に手入れの行き届いた道だ。ただ、前日までの雨のせいか、木道が滑りやすく、樹林の中の道があちこちぬかるみ状態なのには難渋した。
鶯のさえずりを聞きながら2時間も歩いたころ、目の前が大きく開け、あの「坊がつる讃歌」で有名な坊がツルに出た。思わず、「♪ 人みな花に 酔う時も 残雪恋し 山に入り…」の歌詞が出てくる。それまでの泥んこの道にうんざりしていただけに、眼前に大きく広がる湿原の坊がツルの素晴らしい景色に感動する。坊がツル・タデ原湿原はラムサール条約の29番目の登録地だ。湿原の遠くには、幕営地の一画があり、色とりどりのテントが憩うようにして並ぶ。周囲の山並みはどれも大きく、分けても久住山以上にミヤマキリシマツツジの山として有名な平治岳の、美しく雄大な山容が素晴らしい。
法華院温泉山荘に入り、宿泊手続きをし、すぐに温泉につかる。風呂場は登山者で芋の子を洗うようだが、1300mの標高で、ぬるめながらも温泉風呂に入れるのは、有難い。夕食も山小屋にしては豪華だ。途中の坊がツルの素晴らしい景観や山荘の周囲の見事なミヤマキリシマの感動に改めてひたりながら、山荘の夜は更けていく。
翌日は朝一番の午前6時半から朝食。山荘前で記念撮影した後、7時20分に出発した。歩き始めのすぐの急坂で息が上がる。ゆっくりゆっくり歩みを進める。見上げると、岩壁にはまるでピンクのペンキを大きな刷毛でさっとはいたように、ミヤマキリシマツツジの群れがあちこちに見える。しばらく行くと、スガモリ越えの分岐にさしかかる。前方に三角錐の岩峰鋭い星生山がどんと立ちはだかる。その岩山を見ながら、砂礫の道をたどる。台地状の不思議な光景だ。
風がやや強く、硫黄岳の噴煙が不気味に吹き下ろしている。幸いなことに、我々のコースには硫黄ガスの噴煙の影響はほとんどなく、ひたすら石ころだらけの道を登りつめる。時折、周囲のミヤマキリシマツツジを眺めて息を整えながら、辛抱強く急勾配を登ると、ようやく久住の分かれに着いた。右に行けば下山口の牧の戸峠、左に行けば久住山の頂上への道だ。あと少し、あと少しと言い聞かせてジグザクに進む。シーズンもいいのだろう。久住山への登山道は大勢の人でにぎわう人気のルートだ。登り始めから2時間余り、九重連峰の盟主、久住山の頂上に達した。山頂はややガスがたちこめ、四囲の眺望は今ひとつだが、時折り、さーっとガスの幕ガ開かれ、はるか下界が顔をのぞかせる。
再び久住の分かれに戻ったあと、星生山の柱状節理の岩壁の下を巻き、西千里浜へと向かう。この道は広くなだらかで、気持ちがいい。行き交う人も多い。そんな散策の途中、ショッキングな場面に遭遇した。人だかりがしているので、思わず何かと近づいてみると、大柄な男性が仰向けに倒れ、心臓マッサージと人工呼吸を受けているではないか。翌日の新聞によると、倒れていた人は佐賀県の54歳の会社員。40人ほどの山の会のメンバーと登山中、仲間2人が登り始めの30分ほどで体調不良を訴えたため、この会社員が付き添って牧の戸峠まで下ろしたという。そのあと、今度は急いで仲間に追いつこうとしていた途中、突然倒れたようだ。ヘリコプターで搬送されたあと、結局2時間後に心筋梗塞で亡くなってしまった。体調不良の仲間に付き添って下山したぐらいだから、それなりに力のある人だったのだろうが、山道で突然心筋梗塞に襲われた。考えさせられる一件だった。
牧の戸峠からはタクシーを使って長者原にレンタカーを取りに戻り、午後1時過ぎ、九重山に別れを告げた。この後は、どこまでも続く緑滴る阿蘇の山並みのドライブを十分に堪能し、熊本市内の丸子ホテルには予定よりも早く、午後5時前に到着。市の中心部にあるこの老舗ホテルで、名物の馬尽くし料理をたっぷりと味わった。最終日は、ゆっくりとした日程で熊本城や水前寺成趣園の市内観光を楽しんだ。九重山行はじめ雄大な阿蘇の景色を見ながらのドライブ、そして熊本の歴史に触れて盛りだくさんの三日間だった。(G)
コース記録
<1日目>
羽田8:05=ANA191便=9:40大分10:00=レンタカー=12:20九重登山口・長者原(昼食)12:45⇒⇒15:40法華院温泉山荘(泊)
<2日目>
法華院温泉山荘7:20⇒⇒(北千里浜)⇒⇒9:05久住分かれ⇒⇒9:35久住山⇒⇒10:05久住分かれ⇒⇒11:10扇ヶ鼻分岐⇒⇒12:40牧ノ戸峠(レンタカー回収)13:00=(阿蘇パノラマライン)=草千里=16:35熊本市内(レンタカー返却)⇒16:50丸小ホテル(泊)
<3日目>
熊本市内観光…熊本19:00=ANA648便=20:35羽田空港
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