雪化粧の池塘巡りと錦繍の登山道

苗場山2145m 2009年10月11日(日土)〜12日(月)

新潟・長野県境に位置する百名山のひとつ、苗場山は台地状の山頂に広がる池塘の素晴らしさで知られる。日本列島を大型台風が通過し、天気も回復しつつあるため、期待に胸ふくらませて訪れた苗場山だったが、初日はあいにく寒波の影響か、雨の中の登りを余儀なくされた。

総勢16人。遠出の山行にしては、参加者が多く、4台の車に分乗し、いつもの時間より1時間も早く都内を出発した。首都高を抜け、関越道に入り、湯沢インターで高速を降りた。出発時間を早めにした割には、高速の車両の通行量は少なくなかったが、さしたる渋滞に巻き込まれることなく、車はまずは順調。問題は天候だが、こちらもまずまず、と思いきや、湯沢インターに近づくに従って、空模様が怪しげに。みつまたかぐらスキー場の駐車場に到着し、準備体快晴の早朝、うっすらと雪に覆われた池塘を散策操を始めてしばらくたつと、とうとう曇天からポツリポツリ。やむなく雨具をつけての歩き始めとなった。その後も雨はやむどころか強まる一方で、和田小屋にさしかかるころには、本格的な降りとなった。

もともと苗場山の登山道は粘土質で、石ころゴロゴロのうえにぬかるみがひどく、足をとられやすい。降りやまない雨に加えて、足元の山道は錯節する木の根っことゴロゴロ石の間を、雨水が沢のように流れ落ちてくる。これでは沢登りだ。今回はいくつかある登山ルートのうち、比較的登り易い祓川コースを往復するルートとしたが、とても周辺の景色を楽しむどころでなく、ひたすら上るだけだ。下ノ芝を過ぎ、やがて明るい感じの広っぱの中ノ芝だ。雨は相変らずやまない。木の枝や根っこをつかみ、滑らないように石の上を慎重に渡っていく。気が抜けない時間が続く。小松原分岐に出たところで、12時を回った。シャリバテにならないよう、お昼を摂ることにするが、雨も降り続いているため、立ちながら、15分ほどの昼食とした。

ここまで来たらもう一息。めいめいがそう言い聞かせて、さらに神楽が峰まで、ゆっくりゆっくり標高を稼いでいく。この神楽が峰からは、標高にしていったん100mほど下った後、さらに登り返す。これが、なかなかきつい。途中、雷清水の湧水でのどを潤し、気持ちを立て直す。この雷清水の水場まで来れば、あとは頂上まで200mほどの登りだ。しかし、雨に加えて風も出てきて辛い。頂上近くの最後の急登にさしかかる。雨風を必死にこらえて、ひたすら山頂を目指す。いつのまにか道は平坦になり、ガスで視界が悪いながらも、遠くまで木道が延びているのがわかる。ようやく4キロメートル四方に及ぶ台地状の山頂の東部分に出たわけだ。一面ガスがたちこめ、今朝から降り始めたという雪が木道の上に積り、一部は凍結している。周辺の木々も雪にうっすらと覆われている。二つのうちの一つの山小屋の遊仙閣は閉鎖中だ。その脇を通り抜け、今夜の宿となる苗場山自然交流センター(旧苗場山頂ヒュッテ)に午後3時前、到着した。

びっしょり濡れた雨具やスパッツなどの始末をし、腰を落ちつけた。小屋は100人の定員に対し、ほぼ満杯状態。雨のため外に出ることもかなわず、小屋の中で過ごすことにする。夕食の献立はカレーだ。真夜中、外に出てみると、下弦のお月さまと幾つかの星々が見える。どうやら明日は晴天だ。

翌朝は5時前には起床し、6時に朝食を済ませた後、池塘を巡る=写真右上=。小屋の周囲の木道には凍った雪が積もり、慎重な足運びが必要だ。前日来の雨が上がり、数多くの池塘が広がる台地状の山頂は空気が澄みきり、実に気持のいい朝だ。ザラメ状の雪が草紅葉に張り付き、遠くを見ると、平標山や仙ノ倉山などをはじめとする谷川連峰や上越国境の山々が見渡せる。高山植物の宝庫として知られる下りの登山道には、錦織り成す紅葉が素晴らしい。苗場山だが、うっすらと雪化粧した池塘の山頂風景も味わい深い。

山頂標識の前で記念撮影をし、頂上に別れを告げ、下山にかかる。昨日とはうってかわって、青空が広がり、神楽が峰までの下りの眺望がすがすがしく爽快だ。昨日は、足元ばかり見て登っていたのが、この日は周辺の景色を堪能できた。下るに従って、錦に染まる紅葉の木々が何とも素晴らしい=写真左=。上ノ芝、中ノ芝、下ノ芝と順調に下る。ナナカマドの赤い実、黄色や赤を基調にした紅葉のグラデーションが右に左に展開する。こっちもあっちも山肌がパッチワークのように色づき、シラカバの白い大きな幹も青空にすくっと立ちあがっている。

足もとのぬかるみは昨日よりはましだ。歩きにくいことには変わりはないが、登山道を彩る木々の美しさは、まさに「錦繍の秋」と形容するにふさわしい。

お昼過ぎ、登り口の駐車場に戻り、再び車に分乗し、国道17号線わきの日帰り温泉「越後湯沢・街道の湯」で汗を流した後、帰京の途についた。3連休の最終日で渋滞が心配されたものの、思ったほどのひどい渋滞はなく、午後7時前には都内に入った。(G) 


コース記録

1日目>

箱崎5:30==関越道・湯沢IC==0第二リフト駐車場⇒⇒1000和田小屋⇒⇒1155下の芝⇒⇒12:25小松原分岐12:45⇒⇒115神楽ケ峰⇒⇒13:55雷清水(水場)⇒⇒115苗場山自然交流センター(旧・苗場山頂ヒュッテ)(泊)

<2日目>

6:00朝食…苗場山自然交流センター0⇒池塘散策⇒⇒8:25神楽ケ峰⇒⇒9:15小松原分岐⇒⇒9:40中ノ芝⇒⇒1055下の芝⇒⇒11:55和田小屋⇒⇒1215第二リフト駐車場(乗車)==12:45越後湯沢・街道の湯13:40

/休憩14:50帰京へ



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