ライチョウに励まされて登った3000メートル峰、大展望はおあずけ

仙丈ヶ岳 3033m 2013年8月24日(土)〜25日(日)

女性的で優美な山容を見せる仙丈ヶ岳は南アルプスの女王と呼ばれ、雨の中の登頂南アルプス北部の入門コースとして大変人気の高い山である。今回は藪沢新道を登って馬の背で一泊、翌朝仙丈ヶ岳に立ち、小仙丈尾根を下山した。

天気予報が日毎に変わる不安定な天候のなか、仙丈ヶ岳の頂きを13名全員が元気に登頂した。早朝からの雨が降り続き、期待していた大展望は無く、いつもとは違う人影の少ない山頂風景であった。登頂の証拠写真を撮った後、我々も早々に頂上を後にした。展望の代償にライチョウとの出会いが山頂付近で3回もあったのは予想外のうれしい出来事であった。

 新宿駅9番線ホームに12名が7時前に集合、残る1名もほどなく到着し、13名全員が予定通りの列車で甲府駅に9時過ぎに降り立った。広河原行きのバスは10時出発なので、1時間弱の待ち時間がある。乗り場にザックを置き、おそばを食べに行ったり、駅周辺の探索をしたりして時間待ちをした。9時45分頃にはバス乗り場は登山者であふれかえり、定刻にはバスが4台横付けされ、先頭から順番にバスに乗り込む。我々は1号車で出発。バスには運転手の他にいわゆる車掌さんがいて、切符販売の他に観光説明もしてくれた。前から2列目、運転手席後ろの通路側に座っていた筆者は車掌さんと目が合う位置にいたため、眠るに眠れず、結局1時間以上も相づちを打つはめになってしまった。

 村営バスを乗り継ぎ標高2000mの北沢峠へ。トイレ、水補給を行い、13時10分に北沢峠を出発。林道を少し長野県側に進み、大平山荘入口の標識に従い、山荘まで一旦下る。山荘を過ぎると樹林帯の中の登りが始まる。最初は緩やかだが徐々に傾斜がきつくなり、ジグザグの登りとなった。藪沢大滝を巻くこの付近はこのルート中で一番きつい個所だ。休憩を取りながらなんとか登りつめ、沢に架かる丸太の橋を渡ったところで大休憩。沢にはまだ雪渓が所々残っており、流れる水は冷たい。ここからは沢沿いのルートで緩やかな登りが続く。お花も所々咲いており、オレンジ色の大きな花の大群落はマルバダケブキだ。途中に2ヶ所ロープが固定された場所があったが、ストックを男性陣に持ってもらって無事通過。大滝の頭から薮沢小屋を経由してきた道と合流するとヒュッテはもう近い。実は今回も「Kボタン」を活用。馬の背ヒュッテ向け特急便を15時30過ぎにK氏にお願いした。

ライチョウ

ヒュッテでは3階の大広間が割り当てられ、枕が全部で22個、マット2つに3人が寝るようだ。かなり余裕がある。荷をほどき、汗でぬれた衣類を着替えた。夕食まで1時間ほどある。小屋の外で、持ち寄ったワイン、柚子酒、ウイスキーを飲みながらの楽しいひと時の始まりだ。途中、東京農工大の登山研究グループ(?)のメンバー6名が乱入、写真を撮りあったりした。実はこのグループ、藪沢新道で我々と何回か前後しながら登っていた。夕食はカレー、疲れた体には食べやすい。このヒュッテでは夕食は昔からずっとカレーのようだ。夕食後、3代目の若いオーナーからのお話が面白かった。シカ対策とお花畑の復活、マルバダケブキ、夕食カレーの改善、仙丈ヶ岳から見える山のお話など、あっという間に時間が過ぎてしまった。

 早朝、雨が屋根をたたく音で目覚めた。朝食後、雨具を着て玄関先に集合。出発前の写真を小屋のオーナーに撮ってもらった。併せて、ブログ用写真も撮りたいとの事だったので快く了承した。オーナーに見送られながら、予定通り小屋を6時に出発。稜線まで、しばらく登りが続く。汗をかかないように意識してゆっくり歩く。稜線に出るとある(見える)はずの中央アルプスの山並みが無い。あるのは灰色の空と風だけだ。進行方向に時折り仙丈小屋と仙丈ヶ岳が垣間見えるが、すぐに隠れてしまう。仙丈小屋に向かうがれ場の急登を歩いていると、登山道わきに大きなライチョウ1羽を発見。鳴いているので周りを見たらやや小ぶりのライチョウがあちらこちらから出てきた。全部で6〜7羽発見。これだけの「ライチョウを一度に見るのは初めてだ。しばし全員でライチョウ観察。仙丈小屋で小休憩の後、いよいよ仙丈ヶ岳への急登だ。ザレ場を一歩一歩登る。頂きを越えるとその先にまた頂きがある。なかなか頂上に着かない。そんな時、後ろのほうからライチョウ発見の声があった。ここでも5〜6羽の大家族だ。まさか我々と一緒に登ってきたということはないだろう。

 頂上でも近くにある北岳や甲斐駒、鳳凰三山の姿は見えない。雨と風で少し肌寒いので、我々も閑散とした頂上を早々に出発し、小仙丈ヶ岳に向った。左手に藪沢カール、右手に小仙丈沢カールのある稜線を進む。小仙丈ヶ岳に近づくと高さ30mほどの岩場が現れた。ストックを収納、又は男性陣に預け、3点確保の体勢で慎重に登った。しばらく進むと先行の登山者からライチョウがいることを聞き、斜面をよく見ると3羽のライチョウを発見。その後方には昨晩宿泊した馬の背ヒュッテも見えた。小仙丈ヶ岳も小雨と風のため早々に出発。ここからはハイマツ帯の中を6合目まで一気に下る登山道だ。ホシガラスがかなり生息しているようで、何度も飛び立つのを近くで見ることができた。ハイマツの実が好物なようで、尻尾が白くきれいな鳥だ。6合目に着くとハイマツ帯もようやく終わり、樹林帯に変わった。5合目(大滝頭)、4合目と下り、3合目で昼食休憩を取った。展望がなく、頂上での休憩時間が少なかったため、予定よりも少し早く北沢峠に下山できた。

 峠では昨日広河原から運んでくれたバスの運転手さんが人数を数え始め、我々で丁度25名となったようで、広河原行きの臨時バスを出すとのこと。慌ただしく身づくろいを済ませバスに乗り込む。予定より1時間強の前倒しだ。立ち寄り湯で1時間半、甲府駅で2時間弱のバス・電車の待ち合わせ時間が確保できた。立ち寄り湯「白峰会館」でちょっとトラブル発生。売店の若い女性による不適切発言だ。売店の混雑でパニックになったようだがいただけない。

 芦安温泉から予定より1便早いバスで甲府駅に向う。幸いバスは空いていて全員座ることができた。風呂上がりのビールが効いたのか10分もしないうちに白河夜船だ。甲府では夕食を食べ、予定の特急あずさで19時30分過ぎに新宿に到着、ホームで解散した。

 今回の山行の最大の楽しみであった頂上での360度の大展望が得られなかったのは非常に残念でした。でも、ライチョウやホシガラスを何度も直近で見ることができたのは想定外でした。又、1人の故障者もなく、全員無傷で下山できたこともうれしい限りです。後で聞くところによると、後ろの方では1回転した猛者もいたようですが…。怪我しなくてよかったね。(SS)

【追伸】馬の背スタッフブログの最新記事「一日雨 (08/25)」に我々の記事と写真が掲載されています。又、夕食前のひと時に乱入した写真大好きな愉快な若者達(東京農工大)の記事も載っています。

「馬の背スタッフブログ」で検索、URL http://umanosehyutte.blog.fc2.com/

コース記録

1日目

新宿駅7:18==9:03甲府駅10:00==11:53広河原12:30==13:00北沢峠13:10⇒大平山荘13:25⇒丸太橋15:00⇒大滝の頭分岐16:05⇒16:20馬の背ヒュッテ着

2日目

馬の背ヒュッテ6:00⇒仙丈小屋7:00⇒7:30仙丈ヶ岳7:40⇒小仙丈ヶ岳9:00⇒大滝の頭(5合目)10:15⇒3合目(昼食)11:00⇒12:10北沢峠12:15==12:35広河原12:40==13:40芦安温泉(入浴・休憩)15:10==16:10甲府駅18:05==19:36新宿駅着・解散


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