峰から峰へ、ライチョウと豊かな高山植物との出会い


薬師岳
2926m (雄山 2992m)  2011年8月6日(土)〜10日(水)

 室堂平を起点に南下し、五色ヶ原、薬師岳などを経て太郎兵衛平まで、北アルプス北部の山々を縦走した。参加者5名

予定外の雄山でのご来光、ライチョウ親子との出会い、雪渓歩薬師岳山頂でき、ザラ峠までの長く歩きづらい下り、赤いカサ事件(カサよりも薬師岳?)、越中沢岳からスゴ乗越までの標高差500mの大下り、浄土山・獅子岳・越中沢岳等々での頂からの眺望、北薬師から薬師岳までの岩場のアップダウン、そしてコース全般に現れるお花畑など、数々の思い出に残る4泊5日の山行となった。

初日(8/6):台風9号、10号、東海沖に突如発生した熱帯低気圧など、昨夏の笠ヶ岳山行の悪夢を思い出させられる気象状況の下、あずさ1号で新宿を出発。松本で大糸線に乗り換え、通常は2両編成のところ、特別に5両編成だったため全員座って信濃大町まで。途中、南八ヶ岳は頂上まで見えたが、2週間後に登る予定の甲斐駒ヶ岳は雲の中。JR大町駅の改札を出ると浪漫会のカードを掲げた運転手さんが待っており、早速乗り込み、扇沢に向けて出発。途中から大粒の雨が降り出し、土砂降りのなかアルペンルートの長野側起点である扇沢に到着。なお、タクシーは9人乗りジャンボではなく、前列がベンチシートの5人乗りタクシーに前日変更したが、参加者全員がスマートなメンバーだったので助かった。

土曜日の午前中ということもあり相当な混雑を予想していたが、悪天候が幸い(?)して、待ち時間もなくトロリーバス、ケーブルカー、ロープウエイ、トロリーバスと次々に乗り継ぎ、計画よりも3時間早く室堂駅に到着できた。黒部ダム、黒部平、大観望などでの展望は雨のためお預け。室堂平を雨具を着て出発、一ノ越山荘へ1時間で到着。夕食までのひと時を談話室でビールと持参したウイスキーを飲みながら過ごした。夕食後、天候が急速に回復。本日初めての青空、そして室堂平越しの夕焼けと素晴らしい景色に恵まれた。6畳部屋を2室確保でき、ゆったり休めた。

 2日目(8/7):山小屋としては朝食が6時からと遅い時間なので、小屋の人に聞いたら、雄山で日の出を見てから朝食することができまついに雷鳥との出会いすとのこと。我々も空身で3時30分に小屋を出発、ヘッドランプを付け4時30分には山頂到着。5時過ぎに鹿島槍の右肩から登るご来光を拝み、早朝の澄んだ空気の中、剱岳・鹿島槍・槍ヶ岳・笠ヶ岳・黒部五郎岳・薬師岳、そして五色ヶ原山荘や薬師岳までの山並みを確認できた。

予定を1時間遅らせて一ノ越山荘を出発、登山道わきに高山植物が咲き乱れており、花の図鑑で確認しながら浄土山を目指していると、下ってくる年配のご夫妻からの「ライチョウ」目撃情報をもとに、五人がかりで目を凝らすとハイマツ近くの岩場で周囲をキョロキョロ窺っているのを発見。清水さん感激の一瞬。カメラを取り出し一斉に写真を撮りだす=写真左=。星野さんから撮影した写真にライチョウが映っていないとヘルプの声が、原因はズームボタンを押しすぎ、光学ズームの限界を超えて電子ズームの最大までズームアップしたためのようだ。ライチョウ遭遇の話題で盛り上がりながらしばらく登ると浄土山南峰の頂へ。小休止の後、竜王岳の西側斜面を巻いて下り始めたところで、登山道を横切るライチョウ親子に本日2度目の出会い。清水さん再び感激の瞬間。親鳥の前を3羽のひな鳥があっちこっちに動き回り、写真を撮るのが忙しい。ひな鳥が一羽ハイマツの上を動き回っている。親鳥の監視のもとのびのびと遊んでいるひな鳥たち、本当に微笑ましい光景だ。

さて、先を急ごう。鬼岳とのコルまで一旦大きく下ったあと、鬼岳の東側斜面を巻いて再び下っていくと、傾斜のある雪渓が2カ所あり、スリップに注意しながら通過した。この付近もお花畑が次々と現峻嶮な岩場を越えてれ、思わず足が止まってしまう。獅子岳まで登ると正面に五色ヶ原が見渡せ、本日宿泊予定の五色ヶ原山荘も見える。大休憩の後、本日最大の難所、ザラ峠までの下りにかかる。ザレたつづら折りの歩きにくい登山道を延々と下る。途中何組かの人たちに次々と道を譲りながら時間を掛けてゆっくり下る。ここはその昔、富山城主の佐々成政が雪の12月に越えたといわれる峠だそうだ。五色ヶ原まで登り返し、山荘との分岐をテント場方向へ少し入ったところで休憩をしていると、赤い傘を差した一人の女性が歩いてきたので道を間違えたのかと思い、「どちらに行かれるのですか?」と声を掛けたところ、「別に〜、どちらへも」との一言を残し、そのままテント場方向へ行ってしまった。晴天でもないのに傘を差しており、荷物も軽装となにかと怪しげな女性であった。我々が山荘に着いた直後から雨が降り出し、結構ずぶ濡れで駆け込んでくる登山者が多かったので本当に運が良かった。清潔な山荘でトイレも水洗、お風呂も入れるし、ロケーションも抜群で人気の山小屋のようだ。食堂の一角でまたまたアルコールを飲みながら、ライチョウ親子との出会いや赤い傘の女性の話などで盛り上がった。部屋は1つだが、1つの布団に1人で寝ることができまずまず。

3日目(8/8):広大な五色ヶ原を背に鳶山へ続く登山道を登り始めると朝露に濡れるお花畑が現れる。鳶山頂上からはこれから登る越中沢岳と薬師岳、振り返れば立山連山の左後方に剱岳独特の山頂部分が望める。越中沢乗越まで下った後、越中沢岳まで登り返し大休憩。頂上直下で出会った大学生4人と頂上にいた3人は同じパーティで、全員80リットルの巨大なザックを背負っている。8泊9日のテント山行で、ブナ立尾根を登り、裏銀座を烏帽子岳、野口五郎岳、鷲羽岳・三俣蓮華岳と縦走し、そこから黒部五郎岳、太郎兵衛平、薬師岳を越え、今日スゴ乗越小屋から4時間かけて登ってきたとのこと。かなりの急坂で大変だったらしい。これから五色ヶ原で一泊し、明日下山するらしい。もの凄い体力だ。

我々は彼等とは逆に大下りの開始だ。前半はスゴの頭との鞍部までの下り、急斜面が続き、固定ロープに頼って下る場所もあり、緊張の連続だ。鞍部で休憩し、スゴの頭まで登り返して昼食をとる。頭からスゴ乗越までが後半部分で、こちらも大きな岩や急な下りが続き、鞍部に着いた時には座り込むほどだった。ここでも事件勃発。果物をむいて食べていた女性がいきなり悩ましげな声を発したようだ。男性メンバーの1人が気が付き振り返ったが、女性は何事もなかったようにザックを背負い、出発していった。スゴ乗越小屋までの登りが予想以上にきつかった。やはり下りで足を使い切っていたためだろうか。小屋で宿泊手続きを済ませ、寝場所を確認。スペースは1人1畳あり、それほどの混雑ではない。夕食まで時間があるので、本日もウイスキーで反省会。夕食は今回の山行で一番おいしかった。特にきのこが何種類も入っていた味噌汁が最高だった。同じテーブルで食事をしていた女性3名が、明後日折立へ下山し、富山駅近くの銭湯を探していたので、我々の計画を話したところ、折立からジャンボタクシーで富山駅まで同行することになった。

4日目(8/9):今日はいよいよ薬師越えだ。もの凄い晴天のもと、歩き始めると朝露に濡れたチングルマの風車が光っている。今回のルートは本当にお花畑の連続。最初のピークの間山頂上からの立山方面の眺望は素晴らしい。昨日大下りした越中沢岳、鳶山、立山連山、左奥に剱岳、右後方に五竜岳、鹿島槍ヶ岳、等々。南東には赤牛岳、水晶岳、雲ノ平、三俣蓮華岳が望め、後ろに槍ヶ岳の穂先も少し見える。ここからさらに300mほど登ると北薬師岳山頂だ。一歩一歩焦らず着実に高度を稼ぐ。槍の穂先がだんだん大きくなってくる。山頂に近づくと大きな岩の連続で段差が大きい。北薬師岳山頂からは薬師岳本峰までの尾根伝いのルートがよく見える。

しかし、ここから本峰までが長かった。岩場の大きなアップダウンが何度もあり、緊張の連続で、体力もかなり消耗してきた。本峰への最後の登りにさしかかった所で、頂上付近から下を見ている登山者がいたので、手を振ったら、先方も手を振ってきた。すぐに大槻さんだと分かった。だいぶ待たせてしまったようだ。残念ながら既に雲が湧いてきており、槍ヶ岳や笠ヶ岳、黒部五郎岳などの名峰の姿は望めなかったが、全員で薬師岳山頂の標識を囲んで写真を撮り、昼食休憩をとった。太郎平に向けて、大槻さんの先導で下山開始。ザレたつづら折りの登山道を下り薬師岳山荘で休憩。この小屋はまだ新しく宿泊者も多いようだ。ここからなら薬師岳山頂でのご来光も可能だろう。ハクサンイチゲなどが咲き誇っているお花畑のある薬師平を過ぎ、樹林帯に入る。川沿いの山道を慎重に下ると、キャンプ場のある薬師峠に着く。ここから少し登り返すと太郎平小屋まで続く木道だ。

受付を済ませ荷物を部屋に置き、さっそくビールで乾杯だ。小屋の外のテーブルに全員座り、持ち寄ったウイスキーとおつまみで長かった山旅を話し合った。夕食後、不覚にも夕焼けを見ずにいつの間にか寝てしまったらしい。目が覚めたら既に22時となっていた。メガネが見当たらなかった(理由は後で判明)が、外に出てみると星空だった。

5日目(8/10):帰りのジャンボタクシーに乗る人がもう一名増えて9名となったので、出発前に富山地鉄タクシーに携帯で連絡し、折立への下山時刻も含めて最終確認をとった。5時40分に小屋を出発し、緩やかに下る道を進む。途中、五光岩や三角点などで休憩しながら折立まで下山した。折立では既にタクシー同乗者の3名+1名(全て女性)の方は下山しており、我々を待っていてくれた。結局、若い女性の方はバスで富山駅まで直行することになった。タクシーの運転手に全員揃ったことを伝えたら、亀谷温泉の白樺ハイツだと入浴開始時刻まで30分位待つことになるので、富山市内にある「花の湯館」に案内してくれるとのこと。浴場は源泉かけ流しで、広々としており、午前中なので入浴客もまばら、汗や汚れをきれいに落すことができた。富山駅まで送ってもらい、長野県上田の3名の方と別れ、2時間ほど高速バスの出発まで時間があったので久しぶりの生ビールで無事な下山を祝した。13時30分に定刻通り富山駅を出発したバスは北陸道、信越道、関越道を経由して池袋駅東口に20時20分に到着した。

4拍5日の長丁場の山行で、疲れはありましたが全員ケガもなく無事下山することができました。峰から峰の尾根伝いの登山道とお花畑が次から次へと現れるなど変化に富んだ素晴らしいコースでした。

最後に、電池切れで3日目からカメラを貸して頂いた星野さん、交代で先頭を務めてくれた清水さんと斉藤さん、ありがとうございました。(S.S)


コース記録

【1日目】

JR新宿駅7:00発⇒9:43松本9:5610:49信濃大町10:5511:20扇沢11:35⇒・・⇒13:00室堂13:30===14:30一ノ越山荘(泊)

【2日目】

一ノ越山荘3:30===4:30雄山5:20===6:00一ノ越山荘7:00===7:55浄土山南峰8:00===10:25獅子岳10:45===12:00ザラ峠===13:05五色ヶ原山荘(泊)

【3日目】

五色ヶ原5:50===6:40鳶山6:45===7:35越中沢乗越===8:45越中沢岳9:05===10:55スゴノ頭(昼食)11:30===12:20スゴ乗越12:40===13:35スゴ乗越小屋(泊)

【4日目】

スゴ乗越小屋5:50===7:20間山7:30===9:40北薬師岳9:55===11:20薬師岳(昼食)12:00===12:45薬師岳山荘13:00===14:55太郎平小屋

【5日目】
太郎平小屋
5:40===8:50折立9:0010:05花の湯館11:1011:20富山13:3020:20池袋


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