蒼天の茶臼の山並みにため息つくも、帰路につく仲間の笑顔有難し
那須茶臼岳 1915m 2019年10月4日-5日
日に日に深まる秋に、北関東の名湯と栃木随一とうたわれる紅葉を二つながら楽しむ山旅をもくろんだものの、実施日が近づくにつれて、台風18号の影響が避けられない様相。結果的には台風18号に振り回された二日間となった。
当初の計画では、初日の4日に登り、翌日は温泉三昧となる「先憂後楽」パターンを狙ったが、出発日の4日の登山は、台風が併走するように日本海を北上中とあって、急遽予定を変更することにした。宿の北温泉にあらかじめお願いし、午前中に宿に到着次第、部屋を用意してもらうことでOK。翌日も山行スケジュールに合わせて朝食時間を繰り上げてもらった。台風何するものぞ。これでヨシ。初日は、朝から“15人の小原庄助さん”が出来上がる手はずを整えた。
午前7時32分。新幹線「やまびこ201号」は朝まだきの那須塩原駅のホームに静かに滑り込んだ。予想通りの雨。ほどなく、この日一番のロープウエイ行きのバスが到着した。早速、車内で二日間有効、乗り降り自由、乗れば乗るほどお得な周遊券を人数分買い込んだ。実はこの周遊券こそが今回の山旅の行方を左右する大きな強い味方となり、皆の笑顔の下支えともなった。が、この時はまだその有り難さを知るよしもなかった。
バスは雨の那須塩原市内からしっとりと落ち着いた木立の街道を経てロープウエイ駅を折り返す形で、北湯入口のバス停へ。降車後、10時前には早々と北温泉に到着した=写真右=。玄関を入ると自在鍵に鉄瓶がかかり、たくさんの古民芸品が置かれている。ギシギシと音を立てる館内は江戸時代以来の雰囲気を醸しだし、わずかな明かりの中で黒光りし、昔ながらの湯治場さながら。天井の梁も板の間も見事な木組みで、どことなく懐かしい。分けても数多くの露天風呂や内湯には伝統を感じさせる。
夕食までの長い時間、ゆっくりと繰り返し温泉につかる者、雨上がりの散策を楽しむ者など、思い思いの時間を楽しんだ。早速、映画テルマエ・ロマエの撮影でも知られる天狗の湯につかることにした。巨大な天狗の面が四方八方から睨みつけるように掲げられている。異様な雰囲気の中での得がたい湯である。やがて全員が集結して、いつものように夕飯前の宴が張られ、次から次へととりとめのない話しとお酒が往来し、舌も滑らかになる。6時前からの夕食は手の込んだ田舎料理風の膳で、品数が多く、ご飯にたどりつくことが出来なかった=写真左(S氏撮影)=。
「明日はどんな空模様になるのか」―いつしか眠りに落ちての翌早朝、午前4時前に目覚めると、外の風雨がかなり激しい。風は猛り狂うようにガラス戸に打ち付ける。
建物を揺るがすような風雨。いっかな止まない強風に次第に今後の日程が心配になる。「さては、読みが外れたか?」「代替プランはどうするか?」。ここは「台風一過」の真っ青な空に期待してまどろむしかない。明くる朝、風はやみ、空は明るくなり始めた。しめたッ。全員が登頂に向けて準備を急ぐ。しかし、出発するころになると、少し風が吹いている。宿の前で記念撮影をして出発する。そして、今日こそはと、頭の中で登頂に向けてのシミュレーションを繰り返す。
宿から目指すバス停まで40分弱。歩くに従って風が強くなってくるのが気になる。いやな予感が走る。そしてその予感が実感に変わる。休憩を取るため、風よけにと、たまたま立ち寄ったホテルの敷地で建物から出てきた従業員に、何と強風のためにロープウエイの運転が中止になっていることを知らされる。空は青いのにである。
撤退である。ロープウエイを使わずに峰の茶屋経由で上がることは出来るが、帰りもロープウエイなしだと、行程上厳しいうえ、茶臼岳の峰の茶屋コースはいつも風が吹き荒れることで知られていて、仮に上がっても、危険な強風にさらされることが予想される。やむを得ず、すぐさま那須塩原行きのバスでのUターンを決めて、代替プランその1「那須平成の森」に向かう。
先ほど通った道を逆に戻る形で、駒止の滝まで行き、あとは静かな林の中をのんびりと歩くことにする。道幅が広いので気持ちがいい。紅葉がまだ始まっていないのが残念だが、冗談、軽口をたたきながら歩く。何となく、皆さんの足取りに山登りを見送ったことから来る開放感を感じる。
平成の森のフィールドセンターに立ち寄り、次に代替プランその2「八幡ツツジ園」、そして「つつじ吊り橋」まで足を伸ばす。ツツジ園では、展望台から茶臼岳とそれに連なる稜線がくっきりと見える=写真右(S氏撮影)=。木道が整備された園は歩きやすく、天気も良くなり見晴らしもいい。それだけに遠望する茶臼岳の山並みが恨めしいが、ここでの昼食休憩やセルフタイマーを利用しての記念撮影では、皆が笑い転げ、大いに盛り上がった。ツツジ群落地から殺生石までの間の林の中に突然現れるのが全長130mの吊り橋だ。揺れる吊り橋の足下の格子状の穴からは40m下の谷底が見える。ヒヤリとする。見上げると那須連山の大パノラマが広がっている。想い出に残るひとときだった。
ここからはバス周遊券の相次ぐ出番となった。なす自然の家バス停→那須湯本温泉バス停(いったん降りて)また那須湯本温泉バス停→新那須バス停→那須湯本温泉バス停→那須塩原駅と乗り換えを繰り返す(ちなみに赤い矢印は那須塩原行きで黒い矢印はロープウエイ行きなので、行ったり来たりしたということ)。初日もバスの乗降を繰り返して北温泉に向かったが、この日も大いに周遊券のお世話になった。時間に余裕があったので、長居が出来ない鹿の湯をやめて、幾通りもの湯をとっかえひっかえゆっくりと楽しめる温泉に入り、予定の新幹線で帰京の途に着いた。
肝心の山に登れず、お目当ての紅葉を見ることなく、台風一過の晴天が広がる茶臼岳を見上げるだけになったものの、参加者の絶えない笑顔と楽しそうな語らいに救われた山行でした。(G)
<参加者のひと言>
★温泉三昧ののんびりした山行?でしたがやはり自然には勝てません。
「だって人間だもん」。久々の素敵な温泉ありがとうございました。
北温泉は風情があり迷路のような建物で、手摺階段が黒光りして時代を感じさせるものでした。
食事も美味しく、何しにここに来たのかな、「あー湯治かぁ」と思わずおもってしまうほどのんびりした今回の山でした。しかし其れなりに歩きましたよ。
色々と予定の変更を余儀なくされ、今回リーダーは大変だったと思います。お疲れ様でした。ありがとうございました。
(性格の良い日野富子)
★大雨による散策中止、強風によるロープウェイ運行中止による茶臼岳登山断念と急な予定変更が重なりましたが、リーダーの柔軟な対応にメンバーが路頭に迷う事もなく代替え案にも充分満足な週末でした。
歴史ある北温泉でのんびり日々の疲れを癒やす事が出来、とても贅沢な時間を過ごすことがでした。
(e-jan)
★大正浪漫の様な渓谷沿いの北温泉は、ゆっくりとやさしい時間が流れていました。
この場に来られて、源泉かけ流しの温泉三昧、平成の森公園のツツジ吊橋。ホトトギスや秋明菊にも癒されました。
何よりリーダーの大野さんのご苦労様があってこそ、楽しむ事が出来たと感謝してます。茶臼岳はまたの機会に、、、
ありがとうございました。
(ヤマスキウッチー)
★台風18号に伴う強風の影響で那須ロープウエイが運休となり、茶臼岳・姥ヶ平への山行を諦め、平成の森から八幡ツツジ園地散策・つつじ吊り橋までかなり歩きました。温泉とウオーキングのまったりとした2日間を過ごせ、心身ともにリフレッシュできました。
(SS)
★お天道様の粋な計らいにより、ミステリーツアーに参加出来ました
楽しい時空を共有することとなりメンバ−の皆様、ありがとうございました。
(平野)
★ビールと温泉三昧の楽しい二日間でした。ありがとうございました。
(ムー)
★この度の山では、大野さんに切符を買う所から声をかけて頂き心遣い本当にありがたく思いました。1日目は雨でしたが宿に着いてからの散策に参加、霧の中幻想的な那須をじっくり満喫した時間でした。ゆっくりと湯につかり2日間楽しませて頂きました。大野さんリーダーの方々参加の皆さんお世話になりました。ありがとうございました。
(Jnbo)
★温泉三昧の贅沢な今回の山行でした。気合を入れて臨みましたが結果的には皆さんとゆっくりお話もできて楽しかったです。雨の中のハイクや普段できないマル秘体験?もおまけで収穫大。台風一過の茶臼の雄姿に秋の雲がたなびく爽やかな青空を仰ぎながらの昼食タイムは最高でした=写真右=!! 大野リーダーのご苦労と、親切にしていただいた皆さまに心よりの感謝をおくります。
(tom)
★久しぶりのお泊り山行でしたが、天候不良のため長時間のミーティングを余儀なくされました。連日のお酒で帰りの列車では全く飲む気になりませんでした。
でも…楽しかったです。またやりましょう!
(アンビリーバブル)
★天気は良かったのに強風でロープウェイが止まり、姥ヶ平の紅葉が見られず残念でしたが、森の中をゆっくりと散策出来て良かったです。
(S)
★風、雨の中どうなるかと思いましたが古民家の宿と温泉三昧森林浴サンバレーのフルーツ風呂林檎みかんオレンジグレープフルーツがプカプカ浮いてびっくりいろんな事があった後だけにつらい事忘れ笑って笑って過ごした最高の二日間でしたリーダーの大野さん有り難う!御座いました。
(リンドウ)
★ 那須は特異日
霧の中、路線バスは七曲りを爆走する
雨の中、雨具、傘、スパッツ着けて歩き出す。
風の中、宿を後に散策する強者あり。
酒の中、入館し酒缶の林に迷い込む
湯の中、いい湯だな=写真左下(I氏撮影)=、天狗の面を仰ぎつつ湯飲する。
夢の中 台風が、防水シートを煽ってる。叩く音。
森の中、ドングリ実を、踏みつぶし歩く乾いた木道。
空の中、70k.X.560人を支えるワイヤーが、揺れる吊り橋歩き。
石の中、殺生石と、さいの河原のお地蔵さま。
宿の中、回廊は、ややこしく繋がり。祭壇が、あちこちに。一尺の大
黒柱の深いワイン色、もっと太い梁は真っ黒、戸板が黒く光り、障子の桟も揃ってる。江戸末期か明治初期か。
宿の外、出発のとき、庇の屋根には、うだつが建って。張り板と軒飾りは大正期の雰囲気、色調はねずみ色で単調だ。
宿の内外と昨日今日の出来事と周囲の山谷と相まってここは [千と千尋の神隠し] の舞台のような感じをもった。
今回、那須の野のは、特異な天候の日の特異な山行きであった。
(K)
★台風18号の余波で初日は大雨、翌日は風と状況悪化の連続にリーダーの奮闘が続いた。二日目の茶臼岳登山が風によるロープウェイ運休のため、那須野散策に変更。駒止の滝から平成の森散策。そして八幡ツツジ園地に向かった。ここは前日に齊藤さんのご案内で有志5名で訪れた所で、自然研究路経由の藪とぬかるみに難渋した末にたどり着いた園地は、道悪の悪条件の中でもお誘いいただいただけあり、花が無くとも充分に花の盛りを想起させる樹勢があったのだが、霧のためにその広がりが判然とせず、規模がまったくつかめなかった。それが翌日は快晴の中、はるかな森近くまでツツジの樹木だけの園地と見晴るかす街並みが広がっており、前日霧に阻まれて那須岳の山々も望めなかったのだが、この日は突き抜けるような大きな青空をバックに連山の雄姿を際立たせていた。今回は叶わなかったが、できれば錦秋の時季に上からも観てみたいものだ。
(ヤマジジイ)
コース記録
【4日】
東京6:20/上野6:26=(新幹線やまびこ201号)=7:32那須塩原駅8:00=(バス)=9:17ロープウエイ山麓駅バス停9:33=(バス)=9:42北湯入口バス停⇒10:10北温泉(泊)
【5日】
6:25朝食 北温泉7:25⇒大丸温泉バス停8:05=(バス)=8:07北湯バス停⇒9:05駒止の滝⇒那須平成の森フィールドセンター10:00⇒10:20八幡ツツジ園⇒中央展望台⇒11:00つつじ吊り橋⇒なす自然の家バス停11:37=(バス)=11:48那須湯本温泉バス停11:50=(バス)=11:54新那須⇒12:10ホテルサンバレー那須(日帰り湯アクアヴィーナス)⇒新那須バス停15:24=(バス)=那須湯本温泉バス停⇒那須神社⇒那須湯本温泉バス停16:50=(バス)=17:40那須塩原駅19:02=(新幹線なすの282号)=20:14上野駅/20:20東京駅(解散)
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