何度も雪渓徒渉、連続の岩場と急登。槍ならではの圧倒的な存在感
槍ヶ岳 3180m 2017年8月2−5日
また槍に登ってみようか。あの挑戦的なピラミダルな鋭鋒が誘う。9年前と同じ8月の上旬に狙いを定めて、7人のパーティーを組んでの山行だ。直前まで気をもんだのが最近の異常気象。台風5号の迷走だ。…幸い、天は微笑んだ。
新宿からの高速バスを往復利用することにして、2日の午後10時過ぎ、新宿バスタを出発した。東京を出る時にぱらついていた小雨はいつしか止み、これならば何とか行けそうだ。高速バスの最後部席は揺れや振動で睡眠どころではなかったが、下車した後、梓川の向こうにそびえる穂高連峰の山並みが眠気を吹き飛ばす。午前6時10分、広くて歩きやすい樹林帯に一歩を踏み出す。
徳沢、横尾まではおおむね平坦だ。時間はかかるが、助走にすぎない。歩みを進めるにつれ、青空が広がり、川縁の白い砂と周辺の緑とのコントラストが、上高地に居ることの嬉しさを倍加してくれる。やがて梓川の優しいせせらぎが急流となる頃、足下の山道も徐々に傾斜を強めていく。岩にぶつかる渓流がギラギラとはじけ飛び、樹林から降り注ぐ木漏れ日と追いかけっこをしているかのようだ。
全員の足並みは快調だ。3日間の長丁場。メリハリをつけて歩くことにし、歩きやすいところでは、休憩をあまり挟まず、その分、槍ヶ岳直下では、小刻みに休憩を挟んで上がった。結果的には3日間を通じて、いずれも予定の行程時間を1時間以上も縮めて毎日の行程を終えることが出来た。
上高地に入って2日目、槍沢ロッヂから本格的な山道が始まる。驚いたのは雪渓が次から次へと出てきたことだ。出発前、ロッヂのホームページのお知らせで、例年よりも雪が多く、軽アイゼン持参のお勧めが告知されていたものの、それほどではないだろうとたかをくくっていたが、あに図らんや、今年の雪の多さの現れか、ロッヂ出てほどなく殺生ヒュッテの分岐近くまで雪渓の連続だ。クレパスもあるとのことで、慎重にならざるをえない=写真右=。
和んだのは時ならぬサルの群れの出現だ。1匹、2匹、3匹と次第に数を増して行き、親子連れとおぼしき集団が樹林で遊んでいるかと思うと、岩の上に我々の通過を監視するかのように大きなサルがにらみをきかす。しばらく行くと、遠くの雪渓に、突如、サルの集団が現れた。登山者を尻目に雪渓で転び回り、遊んでいるではないか。5匹、10匹、いやそれ以上の群れだ=写真下=。
天狗原の分岐を過ぎると、ますます急登の連続。大小不整形な、歩きにくい岩場のため、時間がかかる。ひと一息入れて見上げる。真っ青な空が槍の真上に広がっているのに気づいた。空気が澄んでいるせいだろう、ピラミッドの稜線の輪郭が紺碧の空にくっきりと浮かび上がる。足元のざれた山道にはチングルマやオニユリ、ハクサンフウロなどが咲き競う。ここも雪渓の連続で徒渉の際に十分注意しないと、大きな事故につながりかねない。
槍沢ロッヂを出て4時間近く、殺生ヒュッテの分岐を越える。槍ヶ岳がもう指呼の間にある。足が重く、上がらなくなる。ジグザグに道を切ってあるが、何せ急登だ。天を突く正面の槍の穂先に励まされ、励まされ、足を運ぶ。難所だ。それでも予定より40分ほど早く山荘に着くことが出来た。
山荘に着いたのもつかの間。いよいよ、メインイベント、槍への登頂にとりかかる。気を引き締める。全員の体調を確認して、小休憩の後、空身で登頂を目指す。幸い、上り下りとも、ルートはそれほど渋滞していないようだ。鎖と鉄梯子の連続だが、基本の3点確保をしっかりしさえすれば問題はない。岩場を手で確実にホールドし、下りの登山者との交差点ではさらに注意して、トップを目指す。浮き石や手をかけた岩の思わぬ崩落にも要注意だ。20分後、最後の鉄梯子を乗り越えて、全員が山頂に顔をそろえた=写真左=。
少しガスがかかり、遠くの山並みはやや判然としないが、雲海の向こうに立山連峰、常念岳、蝶ヶ岳が見え隠れする。それぞれが狭い山頂で、達成感をかみしめる。この瞬間のために、苦しい岩場、急登を越えて来た。欲をいえばガスがすべて消えてくれればと思うが、4回目の登頂はひとまずこれで良しとしよう。記念撮影を済ませて、名残り惜しいが、下る時間だ。登って来た時以上に慎重に急登を下っていく。
山荘に入り、昼食を兼ねて生ビールで乾杯だ。登頂の達成感がビールの心地よい苦味とともに腑に落ちる。いったん部屋に入って簡単に荷物整理し、夕食の前に山荘からの景色をサカナにウイスキーを水で割って流し込む。いつもながらの山荘のひと時だ。変わった光景では、韓国人の来訪者がことのほか多いことだ。とにかくあちこちで、語尾を上げる特有の韓国語が飛び交っている。山荘には韓国語を話せるスタッフもいるとか。メンバーの一人が、山荘に珍妙な便器を見つけたと皆に報告した。「(男性の便器の話しだが)前方に小便用、後方に大便用と思われる2つの穴の開いた便器(ン、前方後円墳??)を見つけたゾ」。それを聞いた住宅設備に詳しい別のメンバーが、「ちょっと、メーカーを確かめてくる」とただちに確認作業に走った結果、日本のメーカーではないと断定した。結局、韓国の登山者に配慮した韓国仕様の便器ではないかとのことで一件落着したが、事の真偽は不明だ。
閑話休題。
最終日の5日は、上高地まで一気に下る。標高差は1500mを越える。午前5時40分、山荘を後にして、登ってきたコースを逆に、延々と下る。疲れがたまっている足をいたわりながら、気を抜かずに槍から遠ざかっていく。天狗原の分岐、大曲、そして初日の宿、槍沢ロッヂ、横尾と下っていく。そして、徳沢園まで来たところで、名物のアイスクリームで、ミニ打ち上げだ。
午後1時半には上高地の日帰り湯「こなしの湯」に到着。4日間の山旅の汗を流す。
帰りの高速バスの時間まで、バスセンター上のレストランで昼食を取り、長丁場の行程を和気あいあいと振り返った。土曜日の帰京のため、途中の高速渋滞が心配だったが、ふたを開けてみると、定刻の午後9時前には新宿バスタに滑り込むことができた。(G)
<参加者のひと言>
槍、やり?!!
心配した台風の影響もほとんど受けず、澄んだ梓川の清流に沿って歩き始める。
何度か残雪エリアを渡りてっぺんが見える遠い槍を目指す。
3日目、出発から6時間(位だったかな)槍ヶ岳山荘到着時、すでにヘトヘトなのに15分程度(と、感じた)休んだ後リュックをデポ、空身で山頂部へ。
急登と言うより垂直!!
岩にしがみつき、鎖とハシゴを掴む腕に無駄に力が入る。下は怖くて見られない。
槍、登頂!!
山頂は足場悪く狭いのに人で溢れてる。苦労して登り皆、去り難いようだ。
下りも怖怖!!
槍に登頂出来た達成感でちょっと鼻タカ
やっぱり槍のブランド力は大きいです!!
でも行程は長かった、長かった長かった…。
あ?、楽しかった!!
大野さん猛者の皆さん、お世話になりました。
(e-jan)
神河内、明神、徳沢、横尾 昨年10月8?10日の涸沢カール 以来です
思えば 7月29,30日 国民憧れ No.1 富士山 剣ヶ峰 と お鉢巡り
今回 8月2?5日 アルピニスト憧れ No.1 槍ヶ岳
たったの 1週間程で 体験 出来たなんて
こんな 幸せ は ないと しみじみ
思います 感謝 !
次は 山の日 連休 何処へ ?
(Y.H)
槍ヶ岳は今回で2回目の登頂。前回にも増して記憶に残る山行となった。雪渓やお花畑が点在し変化に富んだ登山道だ。全員で槍の穂先をアタック、頂上での至福のひと時を共有、元気に山荘に降り立つことができて良かった。槍ヶ岳山荘での早朝の360度の展望が特に感動的だった。東に大天井、常念、蝶ヶ岳の山並み、遠くに八ヶ岳や富士山、南には焼岳、乗鞍、御嶽山、西には笠ヶ岳の雄姿、北西方面には双六、三俣蓮華、黒部五郎、鷲羽岳などの懐かしい山々、遠くに立山連峰などが望めた。ただ、心残りが…。前回の山行と同様に槍の穂先からの眺望が得られなかったことだ。個人的な宿題がまた一つ増えてしまった。厳しかった山行の影響で下山日翌日には既に歩行が…。
(白毛門)
「最高の夏山を満喫しました。大野リーダー有難うございました。槍沢の雪渓の前方に真っ青な夏の空をバックに槍の尖った穂先の何と素晴らしいことか。
これぞ夏山、夏のアルプス。 クリーム色のチングルマ、黄色のシナノキンバイ、ハクサンフウロウの薄紫、スズランのようなアオノツガザクラ、
可憐な10枚の花びらのイワツメクサ、会の象徴クルマユリ等々、高山の花たちに会えた喜び。行き交う青春真っただ中の若い人々の凛々しい汗、
ならば、年齢が三倍の私なら今日は三倍の青春を楽しむぞ。 まだ明けきらない空の黒いシルエットの槍の穂先。やがて明けて、朝の清々しい光の中、左に双六、三俣蓮華、右に大天井、燕岳等々、厳かな山並みに挨拶できる喜び。良い山行でした。」
(T.K)
・夜行バスに慣れてないこともあり、期待と不安の中まんじりともせずに朝を迎え、上高地【神河内、神降地とも】に降り立つ。
やはり名のごとく神々のおわします冷厳な雰囲気を感じ、思わず姿勢を正す。
ほぼ二十年ぶりの訪問で、客相が随分と変化しているように感じた。
地に足の着かない不安なスタートとなるも、初日コースが平坦でもあり、あっけなく昼前に宿の槍沢ロッヂに着いてしまった。
慌ただしい風呂、シャリバテ回避のメシをかっ込み、本日のノルマ終了。
後はマメなメンバーに依るアルコール、氷、つまみをザックに忍ばせ持ち寄ってのG4サミットにオブザーバー参加後就寝。
・2日目、夜のいびきの大合唱に寝不足の不安を抱えつつ、出発。
雪渓、猿の保育園等、環境変化を楽しみながら高度を稼ぎ、前日同様、大幅時短で難なく槍ヶ岳山荘到着。
ザックをデポして一通りの準備とレクチャーを受け、いよいよアタック開始。
教えの効果絶大で全員危なげ無く登頂。
後続組が途切れた幸運もあり、束の間のガスの晴れた眺望も満喫。
やはり感激ひとしおで、降りてのハイタッチで感動を共有する。
2日目サミットも雨に阻まれ、そこそこに終了すると、ここには風呂の無いこともあり、時間を持て余し、暇潰しに寝床で現在各々抱える病状や健康診断結果の告白タイムと情報交換で盛り上がった。
義務的夕食を済ませ、掛け布団縦二つ折りの半開寝袋を作り、潜り込んで就寝。
が、努力むなしく、イビキと寝返りの波状攻撃に敢えなく轟沈。
・最終日、食後、ぼんやり頭を冷気で冷やし出発。
来た道をひたすら辿り、振り返りつつ淡々と降りると、徐々にどんよりとした東京と変わらぬ蒸し暑さになり、
徳沢ロッヂ名物ソフトクリームに総員むしゃぶりつき、入浴、蒸し暑いターミナル食堂で食事を摂り、バス搭乗。
搭乗バスのエアコントラブルが暗示した不快指数の高い新宿駅にほぼ定刻に着く。
(食堂とバスのエアコン問題は後味の悪さが際立ってしまい、この半日は消したい気分)
そしてリーダーの感想文提出の催促を受け散会。
※天気にも恵まれ、仲間にも恵まれた楽しい山行でした。
欲する要所要所で出て来るサプリに飴にスナック等、また、お酒の数々、ごちそうさまでした。
度々、お相伴にあずかり恐縮しております。ありがとうございました。
リーダーの事前のお膳立てと的確なご指示、ありがとうございました。
サブリーダーの岩場攻略法のご教授ありがとうございました。
また、帽子の洗濯、どちらも今後の私の財産で、活用してまいります。
ただ、山座同定講座では事前知識に欠け、チンプンカンプンでついていけず申し訳ございません。
次回は地図情報を吸収のうえ、臨みたいと考えております。
なお、今回の「中年イビキ合唱団」にK嬢の参加はございませんでしたので念のため申し添えておきます。
編集後記:
伴侶のかすかな寝息の中、一枚の布団に熟睡できた幸せを実感した二日目の朝を迎え、若干の筋肉痛に祭りの後のような寂しさを覚えつつ、辿りました。
なお、この二日間、午前4時に目が覚めるという怪奇現象に遭遇中で、
遠く信州神降地の神々の霊力のなせる業ではと考えております。(単なる体内時計の狂い?)
(尿酸値改善挑戦中男
)
念願の槍ヶ岳
膝の腫れが気になりながらの山行でしたが、リーダーはじめ皆さんのお陰で槍の頂上に立てました。感謝。
夜のバス移動、上高地の人の多さ、梓川、槍沢沿いからの景色の変化、又、槍の頂上が見えたときの感動、山荘での寝起き、天気も良かった事もあり時間が許されるならもっと居たいと思う山行でした。
最後に失敗。靴を間違えるはずなど自分は、絶対ないと。
仲間の人の靴で良かった。御免なさい。
(T.K)
コース記録
◇1日目(8/2)
新宿バスタ 22:25発 … 8/3 5:20上高地着
◇2日目(8/3)
上高地6:10 … 8:15徳沢 … 9:35横尾 … 10:45一ノ俣 …11:30槍沢ロッヂ(泊)
◇3日目(8/4)
槍沢ロッヂ5:40 … 6:10ババ平…6:50大曲 … 7:40天狗原分岐 …9:00坊主岩屋下…9:50殺生ヒュッテ …10:55槍ヶ岳山荘11:25…11:50槍ヶ岳 … 12:25槍ヶ岳山荘
◇4日目(8/5)
槍ヶ岳山荘5:40 …6:05殺生分岐…7:30天狗原分岐 … 9:05槍沢ロッヂ …10:40横尾 … 11:45徳沢 … 13:30上高地 森のリゾートこなしの湯 上高地16:15発 高速バス… 20:57新宿バスタ着